マリオットと積水ハウス、地方の「道の駅」に訪日外国人向けホテルを展開
マリオット・インターナショナルと積水ハウスが、地方の「道の駅」に併設して訪日外国人向けホテルを展開することがわかった。
地方のロードサイドで、2020年秋以降に京都府や岐阜県など計5府県・15前後のホテルを開業予定だ。マリオットにとっては日本での客層拡大につながり、積水ハウスにとってはマリオットの世界的なネットワークで集客できるというメリットがある。両社はこれまで、大阪市に「セントレジス」、京都市に「ザ・リッツ・カールトン」を開業した実績があり、2021年には国内初出店のブランド「Wホテル」を大阪・心斎橋に開業予定だ。
両社が新たに展開するのは3~4階建ての低層ホテルで、施設に外国語表記などを充実させる。宿泊費は、マリオットが日本の都市部で展開する高級ホテルに比べて低めの10,000~15,000円とみられる。ホテルを拠点にドライブで地方の食材を味わったり、周辺でアウトドアを体験する訪日客などの利用を見込んでいる。ホテルは積水ハウスが新設する子会社が運営し、マリオットが従業員教育などノウハウを提供する。ホテルの仕様や事業費などは今後詰めていく。
道の駅に併設するホテルのほか、地方の活性化を目指す自治体と協力し、訪日客が好みそうな観光資源も創出する。また、建設用地は自治体などから借り投資負担を抑え、施設は積水ハウスや金融機関などがつくるファンドが資金を提供し建設するようだ。
訪日客を継続的に増やすには、既存の観光地に加え、地方の食材や文化を活かした「体験」に新たな客を呼び込む必要がある。一方で、訪日客を見込んだ宿泊施設は大都市や主要都市が中心だ。両社は地方の郊外部での潜在需要も大きいとみているようで、将来は全国50施設へと拡大する構想もあるという。
政府は2017年に2,869万人だった訪日客数を、2020年に4,000万人に引き上げる目標を掲げている。なかでも、大都市以外の地方の観光需要に伸びが見込める。観光庁によると、2017年の外国人延べ宿泊者数は地方の比率が初めて4割を超え、大分県や福島県では前年比7割増となった。訪日客の裾野が広がりリピーターも増え、訪日客は地方にも足を運び始めている。著名な観光地に加え、郷土芸能や料理作りといった“文化体験”が新たな観光資源になりつつある。
主要な地方都市での訪日客増加をにらみ、大和ハウス工業が2019年以降に金沢市や奈良市で、東急不動産ホールディングスが那覇市や高山市などで長期滞在型ホテルを計画している。しかし、多くの都市では今後も宿泊施設の不足が続く見込みだ。
不動産サービスのCBREの推計によると、2020年時点で札幌・名古屋・福岡の客室数は合計で約7,000室不足するという。また、地方都市ではホテルタイプの偏りが顕著で、国内の単身出張需要をターゲットとしたビジネスホテルが大半を占めるという。“地方ならではの体験”を目的に訪れる外国人にとっては、施設の質や体験の充実度は得られにくいかもしれない。
国土交通省によると、2018年4月25日時点で全国の道の駅は1,145駅登録されている。休憩所や観光情報の提供だけでなく、地元の野菜・魚など特産品の直売所、レストランや温泉、水族館や農場を併設する施設など多様化している。このうち、宿泊施設のある道の駅は80カ所程度だ。道の駅にホテルが併設することで、訪日客にとっては宿泊施設の選択肢が増えると同時に、その土地だからできる体験を楽しめるというメリットがある。マリオットと積水ハウスがどのようなホテルを開業し、特別な体験を提供するのか、今後の動向に注目したい。
【参照記事】
道の駅にホテル マリオットと積水ハウス、訪日客向け
(HOTELIER 編集部)