「全国旅行支援」と「水際対策の緩和」、3社に1社がプラスの影響 人手不足や新型コロナ対策が課題
全国旅行支援と水際対策緩和に関する企業の影響アンケート
政府が実施する観光需要喚起策の「全国旅行支援」が、10月11日より46道府県で新たにスタートした(東京都は10月20日から)。また同日より、入国者数の上限撤廃や外国人観光客の個人旅行の解禁、米国など多くの国でビザが不要になるといった新型コロナウイルスにともなう水際対策も緩和され、新型コロナ禍によって停滞していた人の移動を促す本格的な取り組みが、国内・国外向けともに動き出した。
そこで、帝国データバンクは、全国旅行支援と水際対策の緩和についてアンケートを行った。
<調査結果(要旨)>
- 1.全国旅行支援について、自社の企業活動へどのような影響(直接・間接を問わず、見込みを含む)があるか尋ねたところ、 「プラスの影響」を受けている企業は全体の34.3%となった。また「影響はない」は54.8%、「マイナスの影響」は2.4%となった。
- 2.水際対策の緩和について、自社の企業活動へどのような影響(同)があるか尋ねたところ、「プラスの影響」を受けている企業は全体の32.2%となった。「影響はない」は49.1%、「マイナスの影響」は6.2%となった。
※ アンケート期間は2022年10月14日~18日、有効回答企業数は1,325社(インターネット調査)
全国旅行支援は34.3%の企業でプラスの影響、人手不足が課題に
10月11日よりスタートした観光需要喚起策である「全国旅行支援」が、自社の企業活動へどのような影響(直接・間接を問わず、見込みを含む)があるか尋ねたところ、「プラスの影響」がある企業は全体の34.3%で、3社に1社の割合となった。「影響はない」は54.8%、「マイナスの影響」は2.4%となった。また、旅行支援策の影響を直接受けやすい業種(飲食店/旅館・ホテル/娯楽サービス/旅行/旅客運輸)で見ると、「プラスの影響」が企業の73.0%となり、全体を大幅に上回った。
企業からは「全国旅行支援で、旅行の需要がすごい勢いで増えている」(国内旅行)との直接的な好影響のほか、「交通関係の製品製作を行っており、旅行者が増えることにより交通関係事業者の収益が増えれば、当社の受注も増えると期待」(輸送用機械器具製造)といった間接的なプラスの影響を期待する声も聞かれた。
一方で、「急な需要の変化に対し、人手不足からお客さまへの100%の対応が難しく、機会損失が起きてしまうことが課題。オペレーションが破綻しないように苦慮している」(旅館)や「手続きや適用条件など都道府県によって異なる部分があり、煩雑さが半端ではない」(国内旅行)といった声が企業からあがっており、新型コロナ禍で低迷していた旅行需要が急激に膨らむなかで人手不足からサービス提供に苦慮するほか、手続きの煩雑さに困惑する様子が一部でうかがえた。
水際対策の緩和、インバウンド需要やビジネスの往来活発化はプラスも、コロナの感染拡大を懸念
全国旅行支援と同じ10月11日より始まった水際対策の緩和[1]について、自社の企業活動へどのような影響(直接・間接を問わず、見込みを含む)があるかを尋ねたところ、「プラスの影響」とした企業は全体の32.2%で、全国旅行支援と同様に3社に1社の割合となった。また「影響はない」は49.1%、「マイナスの影響」は6.2%となった。
企業からは「水際対策の緩和と円安で、外国人の購買意欲の向上が見込まれる」(貴金属製品小売)と、円安の進行を追い風としたインバウンド需要の増大を期待する声が聞かれた。さらに、ビジネス上の海外との往来活発化を見込んで、「海外取引先の来日や日本からの海外出張後の帰国時の要件が緩和され、ビジネスの往来が新型コロナ前に近づく」(ゴムベルト製造)といった声も企業からあがった。
他方、「水際対策の緩和や旅行支援そのものは歓迎するが、新型コロナおよびインフルエンザなどの感染拡大は大いに不安」(冷凍水産食品製造)と、訪日外国人を含めた人流の増加にともなう新型コロナウイルスの感染拡大を不安視する声があった。また「現在、中国がゼロコロナ政策を継続しており、自社業務の完全回復にはもう少し時間がかかりそう。今後、業務出張や相互往来が徐々に始まるものと期待」(一般旅行)と、中国との往来回復を待ち望む声が一部で聞かれた。
- [1] 水際対策の緩和は、入国者数の上限撤廃、個人旅行解禁など外国人の新規入国制限の見直し、査証(ビザ)免除措置の適用再開、入国時検査・入国後待機の見直し、空港・海港における国際線受入の再開が含まれる
「全国旅行支援」に関する企業の声
【プラスの影響】観光業界が利用しているITシステムの改修などが活発になると予想(ソフト受託開発)
【プラスの影響】国内で人が動けばモノやカネが動き、疲弊した経済に少しでも良い影響が出る(不動産代理・仲介)
【マイナスの影響】お金や時間が、教育サービス業界から観光・旅行業界に流れてしまう(パソコンスクール運営)
【マイナスの影響】出張のためのホテル予約が取りにくい(不動産鑑定)
【影響はない】直接的に大きな影響はないが、旅行・観光業の景気が改善して、良い経済循環が生まれれば嬉しい。ただ人手不足が今以上に心配(動力伝導装置製造)
「水際対策の緩和」に関する企業の声
【プラスの影響】HALAL(ハラール)認証食品という特殊な食材を扱っているため、インバウンド効果に期待している(食肉卸売)
【プラスの影響】円安をプラスに利用することが大切。訪日外国人を歓迎(包装用品卸売)
【プラスの影響】海外取引先との打ち合わせ・視察での対面が可能となり、行き来がしやすくなって取り引き上プラスになる(内装工事)
【マイナスの影響】日本は感染対策をきちんとしているのに対し、海外は日本ほど感染対策をしていないと思うので、感染が広がる可能性がある(金属工作機械製造)
【影響はない】自動車産業は影響ないが消費拡大につながればよい(工業用ゴム製品製造)
本アンケートの結果、全国旅行支援および水際対策の緩和について、それぞれ全体の3社に1社(34.3%、32.2%)の企業がプラスの影響があると考えていた。今回2つの施策が同時にスタートしたことで、国内観光需要およびインバウンド需要などが盛り上がり、直接関係する業種に加え、関連する他業種へ間接的なプラスの影響が波及すると予想される。コロナ禍によって停滞していた人の移動が活発化することで、消費マインドの高揚や日本経済の活性化が期待される。
一方で、企業から「全国旅行支援及び水際対策の緩和はプラスだが、人材不足など受け入れ対策に課題がある」(旅館)との声があるように、施策の効果を十分に発揮するため、人手不足による機会損失を防ぐほか、不安の声があがる新型コロナの感染拡大防止に努めていくことが課題となろう。
【出典】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000552.000043465.html
(HOTELIER編集部)