アリババグループ、先進テクノロジーを駆使した未来型ホテル「FlyZoo Hotel(菲住布渇)」を開業
中国のAlibaba Group(阿里巴巴集団/アリババグループ)が2018年12月18日、本社を構える杭州市の阿里巴巴西渓園区(Alibaba Xixi Park)横に、未来型ホテル「FlyZoo Hotel(菲住布渇)」を開業した。
アリババグループは、世界最大級のBtoB ECサイト「アリババドットコム」の運営やオンライン決済サービス「アリペイ」を提供するなど、多彩な事業を展開する世界規模の企業。同ホテルはアリババグループが2年半にわたり温めてきた計画で、アリババのテクノロジーを随所に活かした最先端ホテルだ。
ホテルのロビーにはフロントを設けておらず、チェックインはスマートフォンアプリか、ロビーに設置された専用の機械で行う。セキュリティには顔認証技術が導入され、客室、レストラン、ジム、エレベーターなどの出入りはすべて「顔パス」。エレベーターに至っては、ボタンを押さなくても宿泊階まで自動的に運んでくれ、客室から出るとエレベーターは先回りして動き出し、エレベーター前に着くころにはドアが開くという。
また客室内には電話がなく、自社開発のAIスピーカー「天猫精霊(Tmall Genie)」が宿泊者のリクエストや問い合わせに対応してくれる。照明、カーテン、エアコンなどの客室内設備もすべてIoT化されており、天猫精霊に口頭で指示すれば操作できる。
その他、各国のイメージをコンセプトにした客室も設置。韓国をテーマとした客室には、最先端の人気コスメなど様々なアイテムが備えられており、実際に使用して気に入れば、アリババ傘下のECで購入もできるという仕掛けだ。ただ、その目的はECへの誘導だけにとどまらない。
同社は、FlyZoo Hotelで完成させた運営モデルをホテル業界全体に売り込んでいく計画である。
従来のホテルと根本的に異なるのは、管理システムだ。同ホテルは、アリババクラウド(阿里雲)をベースに、ホテル業界最大の情報管理プロバイダー「石基信息技術(Shiji Information Technology)」が開発したクラウド管理システム「FlyZoo Hotel」を採用。国際的な5つ星ホテルでも管理システムは現地サーバーで運用しているホテルが多い中、同ホテルはクラウドで管理という新たな挑戦をする。
現段階で2店舗目を開業する計画はなく、あらゆるホテルに転用できる運営モデルの構築には時間が掛かるだろう。将来的に同社の運営モデルを採用するホテルが世界中で増えていけば、無人化による人件費削減が飛躍的に進み、業界のこれまでの常識が覆るかもしれない。
国内においても先日、NECによる顔認証を活用した「IoTおもてなしサービス実証」を行うことが発表されたばかり。しかし一方で、「おもてなし」や「コミュニケーション」を大切にしてきた文化が日本にはあるゆえ、アリババグループのような先進テクノロジーを駆使したホテルと、人によるサービスに重きを置く従来のホテルの両者が共存する未来になることを期待したい。
【参照記事】
アリババの未来型ホテルが開業。どこでも「顔パス」で上機嫌
(HOTELIER編集部)