星野リゾート、日本政策投資銀行と宿泊施設支援ファンド立ち上げ。総額141億円
星野リゾートや株式会社日本政策投資銀行(以下政投銀)が、全国の宿泊業を支援するファンドを立ち上げることが分かった。運用規模は総額141億円。
星野リゾートと政投銀は、2015年12月に総額20億円のファンドを折半出資で設立。資金不足で老朽化した施設を改修できないといった課題を抱える事業者に対し、出資や融資の形で支援する取り組みを始めているが、今回のファンドでは運用規模を7倍に拡大。地方経済の活性化と収益力の向上も狙うという。
設立は31日付、ファンドの運用期間は10年間。三井住友、みずほ、三菱東京都UFJの各行なども出資。星野リゾートと政投銀が過半数を出資して主導権を握る。
1981年以前の基準で建てられた大型施設(ホテルや旅館の場合、3階建て以上、延床面積5,000平方メートル以上)に対して2015年末までの耐震診断と結果の公表を義務付けた国交省の改正耐震改修促進法以来、宿泊施設は耐震問題への対応という大義と、改修工事の費用負担との板挟みにあっている。
国交省は、ホテルや旅館は公共性が高い建築物だとし改修工事費用の3分の1まで補助金を出しているが、なお宿泊施設の費用負担は大きく、改修工事に踏み切るのは容易ではない。工事中は営業を停止せざるをえない可能性も高いうえ、耐震問題は解決されるが客が増えるわけではないからだ。最近の宿泊客は宿泊施設のハードウェアだけでなく、そこで享受できるサービスや体験の内容を重視する傾向がある。巨額の費用をかけて改修するならば、耐震補強だけでなくホテルや旅館のコンセプトまでのテコ入れが必要だ。
その点、星野リゾートのファンドは利用するホテルや旅館が耐震工事などに伴う費用支援を受けられるだけでなく、星野リゾートの経営ノウハウも学ぶことができるのが特徴。同社は、ファンドの利用施設には同社の予約システムを開放することも検討中だという。将来的には、同社を中心としたホテルや旅館のゆるやかなネットワークを構築し、インフラを共有するという構想もあるそうだ。
施設の老朽化にとどまらず、運営面、人材面、プロモーションなどソフト面で課題を抱える宿泊施設は多く、支え合いなくしての生き残りが難しくなっている。同ファンドはこの構造問題を抱える宿泊施設の再生に繋がるか、各方面からの期待が高まっている。
【参照記事】
・星野リゾート・政投銀、宿泊業支援へ141億円ファンド
・五輪後にホテル・旅館廃業ラッシュ懸念、星野リゾートが救う!?
【コーポレートサイト】
・星野リゾート
・日本政策投資銀行
(HOTELIER 編集部)