エクスペディア グループと沖縄県、訪日外国人旅行者の誘致で提携協定を締結
エクスペディア グループと沖縄県は2018年11月29日、観光客誘致を目的に『沖縄県の観光振興に関する連携協定』を締結した。同グループはこれまで、複数の都市と同様の共同プロジェクトを成功させた実績を持つ。都道府県レベルでの協力体制の構築は、兵庫県に続き2度目だ。
沖縄県は長年、日本国内とアジアからの旅行者が集まるビーチリゾートとして知られてきた。しかし、ハワイ・グアム・ダナン(ベトナム)・バリ(インドネシア)・プーケット(タイ)といったビーチリゾートの台頭により、沖縄県への旅行人気を維持するために県内の旅行業界は年々厳しい競争にさらされている。アジアからの旅行者に過度に依存することによる、潜在的なリスクを緩和する方法を模索していたという。
沖縄県は、ロングホール(長距離圏)市場であるアメリカや欧州からの旅行者増加を目指し、このたび同グループとの提携に至った。同グループの先進的なテクノロジーと世界市場での経験、業界有数のビッグデータに基づく知見とともに、県内の宿泊施設がデジタル時代のビジネス手法に親しみ、国際感覚を身につけることが期待される。加えて、この取り組みにより、県内宿泊施設が収益最大化に向けより理論的なアプローチをとり、海外からの宿泊客受け入れにこれまで以上に前向きに取り組めることを目的としている。
同グループは、沖縄県に特化した以下6つのマーケティング活動を展開すると同時に、県内の宿泊施設や地元観光業界と関係のある組織・団体に向け、情報やアイディアを提供する。
1.世界に向けて沖縄県の魅力を発信
同グループ傘下の旅行サイトを訪問する月間6億7,500万人以上のユーザーに、沖縄県の美しい自然と独特の文化をアピールする。旅行先として沖縄県の国際的知名度を向上させ、海外からの需要を喚起させる。
2.宿泊施設の需要拡大と長期滞在を促進
同グループのビッグデータに基づく知見を活用し、欧米市場にターゲットを絞ったプロモーション戦略を練る。県内の宿泊施設に対する需要を引き上げるとともに、より滞在期間の長い旅行者を誘致する。
3.沖縄県の旅行業者とデータおよびベストプラクティスを共有
宿泊施設の経営者を対象に、同グループのインバウンド需要動向に関するセミナーを開催する。収益管理や人材育成などの分野における業務の効率化を促進すべく、世界での経験に基づく最良のビジネス手法を紹介するセミナーも予定している。一連のセミナーは、商店街組合・小売店・旅行業参入を目指す新規事業主など、旅行業以外からの参加希望者にも開かれる。
4.旅行業の未来を担うプロの育成
旅行業界で働く未来のプロフェッショナル育成を援助することを目的に、地元の教育機関で、インバウンド旅行に関する講義のサポートや実践的な知識について講習などを行う。
5.災害や、その他旅行業に影響する緊急事態発生時の対応をサポート
台風やその他の緊急事態の発生時に情報を共有する。例えば、予約とキャンセルの動向などに関する同グループの知見やデータを参考に、県内の旅行業者と同グループは共同で落ち込みの大きい国や地域を特定し、ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンを行うなど、早急に挽回する方法を見定めることも可能である。
6.地域社会への貢献
同グループは地元の旅行業団体と協力し、CSR(企業の社会的責任)プログラムを実践し地域社会に貢献する。
玉城デニー沖縄県知事はこのたびの提携について、「沖縄県にビッグデータ解析による知見と世界基準のノウハウをご提供いただくとともに宿泊施設の経営者にとって、欧米からの旅行者を戦略的に誘致することが可能となります」と述べた。また、提携は県内の観光業の発展に大きく貢献すると考え、海外からの旅行者へ沖縄県の魅力をアピールし、地元社会を活気づけるための沖縄県の取り組みの一助となることを期待しているという。
同グループの最新データによると、沖縄県へのインバウンド需要は前年比25%増と堅調な伸びを示しているという。韓国・香港・台湾からの旅行者数が堅調に伸びているほか、シンガポール・アメリカ・イギリスからも多くの旅行者が訪れている。注目すべきはスペイン(前年比280%増)、フランス(前年比60%増)、オーストラリア(前年比50%増)からの旅行者の急増だという。
エクスペディアホールディングス株式会社のマイケル・ダイクス代表取締役は、「沖縄県の宿泊施設経営者の皆さまへ、弊社のベストプラクティスや技術分野の経験を共有する機会を得ることができました。世界市場を目指す沖縄県の取り組みに弊社が参加できることを誇りに思います」と述べている。
沖縄県によると、2017年度の観光客数は過去最高の957万9,900人を記録した。さらに、外国人観光客は269万2,000人で、10年連続で過去最高を更新している。沖縄発着航空路線の新規就航と既存路線の増便で空路客が増加したことや、クルーズ船寄港回数が夏場を中心に大きく増加したことで海路客が増えたことが背景にある。
2018年3月、沖縄県は2020年に欧州からの沖縄直行便就航を目標とした『国際旅客ハブ形成に向けた将来ビジョン』を発表した。計画実現に向け、全日空(ANA)とルフトハンザ航空(ドイツ)と連携し、ドイツやオーストラリアからの誘客を強化する。また、沖縄の認知度を高めると同時に、欧州から訪れる旅行客が日本やアジアを訪れる際の玄関口となるよう、那覇空港のハブ機能充実を目指している。欧州客は滞在日数が長い傾向にあり、県では欧州直行便を就航し宿泊客を取り込む狙いだ。
計画初年の2018年は、ANAなどと連携し欧州圏への広報活動を充実させることに加え、フランクフルトから東京を経由し、那覇と国内路線を用いた周遊ルートを作る。2019年は東京・香港・上海・ソウルと結ぶ那覇への便を活用し、沖縄に外国人観光客を呼び込む考えだ。そして、最終年となる2020年に欧州直行便につなげる計画である。
外国人観光客誘致に向け取り組みを続けてきた沖縄県が、このたびエクスペディア グループと提携協定を締結したことで、さらなる外国人観光客の増加や地域経済の活性化につながると期待したい。
【参照記事】
・沖縄県とエクスペディアが観光振興でコラボ
・欧州観光客、誘致へ直行便 沖縄県とANAなど連携 20年目標
・<社説>欧州直行便計画 国際観光地の魅力創ろう
【参照サイト】
沖縄県とエクスペディアグループとの『沖縄県の観光振興に関する連携協定』
(HOTELIER 編集部)