一棟貸し古民家4軒からなる「ヤマウラステイ」が茅野市に2020年5月開業、アクティビティで出会いを創出
一般社団法人ちの観光まちづくり推進機構は2020年3月9日、長野県茅野市内で、風土や地域の事情を反映した個性ある4軒の古民家を、一棟貸し素泊まりの宿泊施設『ヤマウラステイ』として2020年5月に開業すると発表した。3月17日には公式Webサイトがオープン予定で、今後、準備が整い次第順次予約を受け付ける予定だという。
ちの観光まちづくり推進機構は、人と人とをつなげる『ちの旅』を通じて「住んでよし、訪れてよし」という地域の誇りを育み、持続可能な地域づくりに貢献することを理念としている。この度の宿泊施設開業は、機構で進めている「観光まちづくり」の柱となるものだ。4棟の古民家の改修にあたっては、日本文化研究・古民家改修の第一人者として知られるアレックス・カー氏がプロデュースを行った。長い歴史が積み重ねてきた柱や壁、家自体が持つ歴史の風格や美しさを大切にしつつ、機能の面で大規模な改修を施した。古民家の持つ贅沢な佇まい、家としての快適さを、カー氏の美意識でつないだ上質な空間を実現している。
アメリカ・メリーランド州生まれのアレックス・カー氏は東洋文化研究者、特定非営利活動法人篪庵トラスト理事である。徳島県東祖谷山村で茅葺き屋根の民家(屋号=ちいおり)を購入し、その後屋根の吹き替えを完成させ田舎の復活活動に取り組む。茅野市のほか、徳島県の祖谷(いや)地方、五島列島の長崎県小値賀町(おぢかちょう)、古い商店街が残る香川県宇多津町、奈良の秘境と呼ばれる奈良県十津川村など、その地ならではの再生プロジェクトを手掛けている。また、観光を核にした滞在型観光の促進、地域振興につなげ、現在も全国各地で地域観光振興の多様なプロジェクトに取り組んでいる人物だ。
機構では『ヤマウラステイ』を地域への入口と位置づけ、滞在中に地域の生活を垣間見られる郷土料理体験や、地元のガイドの案内で町をめぐる町歩きなどの滞在交流プログラム「ちの旅アクティビティ」への参加を通して、この地で生きる人の知恵やよろこびにふれる出会いを創出することも期待している。同施設と『ちの旅』による観光客と住民との交流を通じて、美しい風景、まちなみ、伝統的な暮らしや食文化などの地域の魅力を残しつつ、持続可能な地域をつくることを目指す。
茅野市・山浦エリアは隠れ里のような場所で、古い家や開発されていない美しい農地が残った山に囲まれた集落である。アレックス・カー氏は「一見何でもない村落ですが、実はそういった景色が残っている場所は日本中探してもほとんどなく、奇跡的に守られてきた隠れ里が、山浦なのです」と述べている。そんな集落に建つ同施設の古民家は、「清水(きよみず)」「花兎(はなと)」「金渓(きんけい)」「渋道(しぶみち)」の4軒あり、それぞれ趣が異なる。
清水
茅野市湖東に位置する「清水」は、川のせせらぎや田園風景、古い民家などが残された、山奥へ向かう道にひっそりと佇むまさに「隠れ里」と呼ぶべき集落に建つ邸宅だ。もともとは長野県佐久地方にあった家を150年前に現在の場所へ移築した。家の一角にはかつての厩(うまや)があり、その高い天井を活かし、改修では吹き抜けのリビングに生まれ変わっている。敷地面積は1,248平方メートル、延床面積は141平方メートル。定員6名で駐車場2台を用意している。
花兎
茅野市湖東に位置する「花兎」は、母屋に寄り添うように建つ隠居である。ご隠居が夫婦で暮らした、かわいらしい佇まいの古民家だ。清水の離れとして作られた古民家から見る景色にアクセントを与えているのが蔵で、壁を塗る漆喰を使って鏝(こて)で描いた「鏝絵」も個性を与えている。バスルームから見る、この蔵を含めた景色は花兎の見どころの一つだ。敷地面積は104平方メートル、延床面積は61平方メートル。定員2名で駐車場1台を用意している。
金渓
茅野市金沢に位置する「金渓」は、川向うに建つ山すその家で、築110年ほど、明治期に建てられたものと伝わっている。目の前に川が流れているのが特徴で、静かな集落に響く川のせせらぎも過ごす時間を彩る要素となる。また、古民家の敷地の向かい、開けた視界の先には八ヶ岳が臨める。寝室やリビングで八ヶ岳の雄大さを感じながら過ごせるのも楽しみの一つだ。敷地面積は292平方メートル、延床面積は103平方メートル。定員3名で駐車場1台を用意している。
渋道
茅野市北山に位置する「渋道」は、地域独特の本棟造りによる2階建ての古民家だ。山奥で温泉旅館を営む一家が建てた別宅で、正方形の間取りに加え、傾斜の緩い大きな屋根が特徴で、かつて養蚕が行われていた2階は梁が見える広々としたスペースとなっている。囲炉裏や土壁が残る庭の蔵、家を囲む用水路など、風土と調和しながら生きてきた人々の暮らしを感じることができる。敷地面積は662平方メートル、延床面積は183平方メートル。定員6名で駐車場1台を用意している。
『ヤマウラステイ』の古民家は、現代人の気忙しい日常を離れるための家として、山奥にある隠里へ入って散歩したり、家でくつろいだり、自由にゆっくりと過ごせる。そのため、長い歴史が積み重ねてきた柱や壁などは可能な限りそのままに、上質で快適な空間を目指して改修されている。ただ古いわけではなく、本当にリラックスして過ごせる贅沢な家だ。機構は「日本の財産と言ってもいい隠れ里で、何もない、だけど本当に贅沢なリゾートを楽しんでもらう場所」と述べている。
東京から電車で2時間ほどでアクセスできる長野県のほぼ真ん中にある茅野市は、特徴の異なる4つのエリアがある。静かな自然の景色が広がるリゾート地の「蓼科エリア」、広々とした高原エリアでアウトドアやレジャーを楽しめる「白樺湖・車山エリア」、世界中から登山者が集まり神秘的な原生林や池が広がる「八ヶ岳エリア」、八ヶ岳山麓の田園風景が広がる「まちなか・里山エリア」と、それぞれ異なる魅力を持っている。建物の特徴を残しながら自然の中で贅沢な滞在ができる『ヤマウラステイ』は、各エリアを旅する拠点としても良さそうだ。
「ちの旅アクティビティ」では、見るだけでなく“体感する”こと、また会いたくなる“人”との出会い、土地の“本物”を味わうアクティビティなど、土地の人と一緒に作った茅野でしか体験できない特別なプログラムを用意している。体験した人からは「現場で見て、聞いてこそわかること、感じられることがあった」「間近で職人さんの素晴らしい技術と人間性を見ることができて感動した」という声が寄せられている。『ヤマウラステイ』での滞在や「ちの旅アクティビティ」が人々の交流を促し、茅野市の暮らしや文化を伝え、持続可能な地域の実現に貢献することを期待したい。
■「ちの旅」公式サイトはこちら。
【参照記事】
一般社団法人ちの観光まちづくり推進機構 アレックス・カー氏プロデュースの古民家宿泊施設「ヤマウラステイ」2020年5月オープン!
【参照サイト】
・茅野観光ナビ
・ちの旅アクティビティ
(HOTELIER 編集部)