「藩主の御茶屋屋敷」がテーマの「星野リゾート 界 長門」開業、温泉街の“そぞろ歩き”を楽しめるカフェを併設

星野リゾートが全国に展開する温泉旅館ブランド『界』の16施設目となる「星野リゾート 界 長門」が、2020年3月12日、山口県・長門湯本温泉に開業する。

『界』は、星野リゾートが全国に展開する温泉旅館ブランドである。「王道なのに、あたらしい。」をテーマに、和の趣や伝統を生かしながら現代のニーズに合わせたおもてなしを追求している。また、その地域の伝統文化や工芸を体験する「ご当地楽(ごとうちがく)」や、地域の文化に触れる客室「ご当地部屋」が特徴だ。

長門湯本温泉は、毛利藩の藩主が湯治に訪れていた場所と言われており、高度経済成長時代には約40万人もの旅行客が訪れる温泉街として栄えてきた。しかし、近年の旅行スタイルの変遷とともに、温泉街の旅行客は2014年には約20万人まで減少した。長門市は2014年より長門湯本温泉街の再生に向けた取り組みをスタートし、2016年1月には、星野リゾートが「長門湯本温泉マスタープラン」の策定を受託した。『界』の進出を含め、これまで地域・民間・公共が連携した温泉街再生に向けた取り組み『長門湯本温泉観光まちづくり計画』を進めている。

計画の一環として本日開業するのが「星野リゾート 界 長門」だ。同施設はJR長門湯本駅から徒歩約15分に位置する。山口県内には多くの武家屋敷が現存し、長門湯本温泉へ湯治に訪れていたとされていることから、武家文化を体現した「藩主の御茶屋屋敷」をテーマにした。御茶屋屋敷のイメージと現代の建築を融合した造りが特徴である。星野リゾートは「ご当地の豊かな文化を体験できる温泉旅館を目指します」と述べている。

山口県の武家文化を生かしたご当地部屋「長門五彩の間」は全40室あり、藩主が休む寝台をイメージして造った。寝台が一段高くなっており、格子状の囲いは高貴な雰囲気が漂う。“五彩”とは、客室を彩る5つの要素である山口県の伝統工芸「萩ガラス」「大内塗」「徳地和紙」「萩焼」、そして「窓から見える四季折々の景色」を表現している。

客室入口のサインには「萩ガラス」をあしらった。モスグリーンの色合いと、硬くて傷つきにくく熱にも強い特徴を持ち、やわらかい光で宿泊者を迎える。客室に入ってすぐに目につくのは、優雅な絵模様が特徴の山口県の伝統工芸である「大内塗」の壁飾り。「夫婦円満の象徴とも言われる対の人形は、美しい漆塗りと金箔を使った「箔絵(はくえ)」が特徴だ。客室の窓からは、音信川沿いに咲く春の桜や紅葉で色づく秋の山々など、四季折々の景色を楽しめる。それぞれの客室から眺められる景色とともに、近くを流れる音信川の音に耳を傾ければ心が安らぐ滞在が叶う。

ベッドボードには、室町時代より800年以上も続き、山口市の無形文化財に指定されている「徳地和紙」を使用した。寝台が華やかになるような色合いに染められた和紙を設えている。徳地和紙は江戸時代、藩の重要な輸出品の一つとして使われていた。現在わずか数戸しか残っておらず、山口市の無形文化財に指定されている。

段違いの棚が設置された床の間には、長門湯本温泉からほど近い深川窯の三人の作家による「萩焼」の作品を配している。「萩焼」は、土の風合いを生かした素朴な作風のものが多く、絵付けなどの装飾はほとんどされないのが一般的である。今回、同施設の客室やロビーに配するにあたり、萩焼本来のあたたかさを生かしつつ、新しさを感じられる作品にした。

『界』ブランドのおもてなしの一つ、ご当地の文化を体験する「ご当地楽」として、同施設では「おとなの墨あそび」を提案する。山口県の伝統工芸「赤間硯」で墨をすり、芳香を感じ、墨の良さを実際に体験し、扇形の型紙に自身の思いを綴ることができる。江戸時代には参勤交代の時に使う献上品として赤間硯が使われており、原料となる採石用の山は藩主の命があった時のみ採掘がおこなわれていた。長州藩の名産として簡単に手に入れることができない硯は、松下村塾の師である吉田松陰も愛用したと言われている。発色や伸びが良い墨汁を得ることができる「赤間硯」は、現存する職人はわずか3名。非常に希少な本物の硯に触れる体験ができる。

また、湯温が高い「あつ湯」と源泉かけ流しの「ぬる湯」がある内風呂、露天風呂を備えている。山口県最古の温泉「長門湯本温泉」は室町時代、藩主が湯治にきていた場所と言われている。この藩主を癒やした湯はpH8.9とアルカリ成分が強く、化粧水のような成分の泉質が特徴だ。

食事処はプライベートが保てる半個室となり、地域ならではの旬の食材をいかした会席料理を、意匠を凝らした器とともに楽しめる。山口県はイカの摂取量が全国第二位を誇り、甘みが強く肉厚で柔らかいイカを先付やお造りで提供する。また、酢の物・八寸・お造りを一緒に盛り合わせた華やかな「宝楽盛り」には、萩焼の器と、山口県内で唯一の桶職人・坂村晃氏の桶を使い、意匠を凝らして仕上げる。2020年9月1日以降は、山口県の名産品であるふぐを中心とした会席料理を提供する。

同施設は『長門湯本温泉観光まちづくり計画』で掲げる、魅力的な温泉街の一部になることを目指している。「温泉街そぞろ歩き」を楽しめるコンテンツの一つとして、界ブランドで初めて宿泊者以外の方も利用できる「あけぼのカフェ」を併設する。このカフェでは、山口県らしさを感じられる「ゆずきち」や「夏みかん」のジャムを使ったどらやきを販売する。甘さの中にほのかな酸味を感じる味わいのどらやきとともに、温泉街のそぞろ歩きを楽しめる。

観光経済新聞社の『にっぽんの温泉100選』によると、長門湯本温泉は1999年には23位だったが2015年には86位と低迷していた。近年は順位を上げており、同社が2019年12月に発表したランキングでは48位(前年53位)だった。長門市は「「10位以内」という数字は、決して夢物語ではなく、全国各地の温泉地を知り、またマスタープラン策定業務を通じて長門湯本温泉の潜在力を分析した星野リゾートから、地域資源を現代の観光客から評価されるレベルに磨き上げることで達成可能な水準と評価されている数字であり、また、温泉地としての再生が継続的な好循環を生むことが期待できる水準である」としている。目標を達成できた場合の経済波及効果は、宿泊客数33万人・観光消費額176億円、日帰り客66万人・観光消費額103億円と見込んでいる。

『長門湯本温泉観光まちづくり計画』では全国温泉地ランキングでTOP10に入ることを目指しており、その戦略として星野リゾートが策定した基本方針は、全国の温泉地を分析したうえで「自然を生かした魅力的な温泉街を持つ温泉地」を目指すということだ。長門湯本の地形や観光資源などで魅力的な温泉街に必要な6つの要素「外湯」「食べ歩き」「文化体験」「回遊性」「絵になる場所」「休む佇む空間」を表現し、土地の魅力を最大化できるようなリノベーションを提案した。「星野リゾート 界 長門」以外にもさまざまな取り組みを行っており、今後の予定では、2020年3月18日に温泉街に温泉棟と飲食棟が開業、3月26日には温泉街に長門名物「焼き鳥」を提供する「さくら食堂」が開業予定だ。

「星野リゾート 界 長門」は、地域の伝統に触れられる客室や体験を提供するだけでなく、温泉街に訪れた観光客も立ち寄れるカフェを併設している。まちづくりに貢献し、長門湯本温泉に訪れる観光客・宿泊客の増加を後押しする施設となってほしい。

星野リゾートは長門市のほか、2019年4月に下関市と基本協定を締結し、下関市あるかぽーと地区において「星野リゾート OMO 下関(仮称)」の2023年春の開業を目指している。『OMO』ブランドとして初の港湾都市での事業展開となり、今後の動向に注目が集まりそうだ。

■「星野リゾート 界 長門」公式サイトはこちら

【参照記事】
・「星野リゾート 界 長門(ながと)」が山口県・長門湯本温泉に2020年3月12日開業します
・山口県下関市あるかぽーと地区へ「星野リゾート OMO」が進出 「下関港ウォーターフロント開発に係るホテル事業の基本協定」 締結のお知らせ
【参照サイト】
・長門市|長門湯本温泉観光まちづくり計画を策定しました
・観光経済新聞|にっぽんの温泉100選
・観光経済新聞|第33回「にっぽんの温泉100選」全ランキングを発表

(HOTELIER 編集部)


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