ホテル・旅館の規制緩和で1室でも営業可能に。古民家活用し訪日客増加に期待。
厚生労働省は、ホテルや旅館の客室数規制を撤廃し、1月末から1室でも営業できるようにする。従来の規制では、旅館は5室以上、ホテルは10室以上の客室が必要だった。民泊の解禁に合わせ、経営側の選択肢を増やすとともに負担を減らし、訪日観光客の取り込みにつなげたい考えだ。
加えて、客室の最低床面積の規制も緩和し、古民家の改修なども促す。従来は、ホテルの洋式客室は9平方メートル以上、旅館の和式客室は7平方メートル以上だった。新基準では、ベッドを置かない場合は7平方メートルあれば認める。
2017年の訪日客は2,800万人を超えた。政府は、東京五輪を控える2020年に4,000万人に引き上げる目標を掲げているが、訪日客の増加に対し受け皿をどう広げるかが課題だ。ホテルの稼働率は、首都圏や関東圏を中心に高まっている。
大型ホテルなどの整備には時間がかかるうえ、建設コストも上昇する。そのため政府は、古民家や都心の下宿施設といった小規模施設もホテル・旅館として運営しやすくする方策が必要と考えた。1月末には旅館業法の一部が改正される。
また、今年6月施行の「住宅宿泊事業法(民泊新法)」により、民泊が全国で解禁されることで、政府は訪日客の増加につながると期待する。一方で「営業日数は年間180日まで」などの規制もある。治安への不安から、自治体独自の規制を設け、営業できる地域や曜日を限定するといった動きも多い。
昨年12月の自治体への通知でも規制を緩和し、収容定員ごとに定めたトイレの数、フロントや宴会場など場所ごとに決めていた明るさの基準を撤廃した。これまで、5室未満の施設は「簡易宿所」として営業できた。しかし、不特定多数の客が1室に泊まることを前提にしていたため、1部屋に複数のトイレを設けるなど、経営側の改修コストがかさむ例があった。
ホテル・旅館に義務付けられたフロントの設置基準も緩和され、顔認証などのIT機器設置でフロント機能の代替が可能になる。施設ごとの規制緩和のほか、近隣の小規模施設との一体運営もしやすくなるよう、緊急時に10分程度で職員が駆けつけられれば、フロントを1ヶ所に置き共有可能にする。
2015年4月に日本政策投資銀行がまとめたリポートによると、建築基準法が制定された1950年以前に経った木造建築は、156万6,200軒あるという。日本家屋の風情を楽しめるよう、地域資源・観光施設として改修する動きも出始めている。
古民家を再生・活用して旅館やカフェなどの施設を展開する、一般社団法人ノオト(兵庫県篠山市)の金野幸雄代表理事は、規制緩和で施設設計の自由度が高まることに対し「改修費を抑えられる。古民家の付加価値を高めて富裕層なども呼び込みやすくなる」と語ったという。
【参照記事】
ホテルや旅館、1室でも開業 規制撤廃で古民家活用
(HOTELIER 編集部)