家具業界の常識を変え挑戦し続ける、フィールドアロー【Vol.2】代表:矢野氏インタビュー
これまでの中古流通を変えた他業界の存在
昔から家具の製造や販売、中古はあるものの、全てをひとつの事業体で行う例は少ないという家具業界。そうした中で同社が行っている事業は、まさに業界の常識を覆す挑戦とも言える。
中古流通を当たり前にするために、どのようなものが中古流通に載せられるのかを啓蒙していかなければならない。
しかしフィールドアローはモノづくりに重きを置いている状況から、マーケティング力や発信力の低さは課題としていた。
そんな折、次世代のあるべき中古流通を啓蒙、確立し、飛躍的に成長を遂げた他業界の存在が、それを解決していっているという。
中古流通というものを当たり前にしてくれたのは、最近よく話題になっているメルカリさん。彼らが中古流通の生態系を確立していってくれている、と言えると思います。
彼らが家具業界に与えた影響は大きいと思いますね。
家具って使わないとなると明らかに邪魔なものじゃないですか。大きいし取り扱いにくい。でもそれを誰かに欲しい、使いたいと言ってもらえたらみんな喜んで提供すると思うんです。
メルカリユーザーへの「将来売ることを想定して家具を買いますか」というアンケートの問いに対して、70%以上のユーザーが「はい」と答えたアンケート結果を見たことがあります。ですから家具においてもこういったCtoCプラットフォームなどの出口をきちんとつくれば、家具の買い替えが進むんじゃないかなと思います。何より、ユーザーにとって便利な環境を作ることが重要かなと。
-そうした矢野さんの考えに賛同する同業者さんはいないのですか?
正直大変少ないですね。製造、販売、中古がそれぞれ別々で、うまく連携されていません。同じ家具でも別業界といった感じです。
「車の流通モデルを家具流通の当たり前に」を実現しようと思えば、まずは小さくてもいいので、実績を積み上げて結果を出していくこと、そしてそれをオープンにしていくことが大切だと思います。
売りっぱなしでいるだけでは、業界のレベルアップや、ユーザビリティからはどんどん遠のいて必要とされない業界になっていってしまう。だから、まずは自分たちが小さくてもいいから成功しなければいけない。
サービス業とかってよく「売ってからが本当のサービス」って言うじゃないですか。でも家具業界って、一度関わったら結構お客さんと途切れちゃうことが多いんですよ。
やっぱり一生モノという考えの方が多いから買い替える機会が少ないということもありますし、売り手側の売りっぱなしマインドもその要因です。
そこを僕たちは修理やレンタルというカタチで継続的接点を持ち、変えていきたいと思っています。
他業界とのタイアップが業界を変える一歩に
人口減少や住宅着工件数の減少など、ますます事業環境が厳しくなるであろう家具業界。今後はどのような打ち手で事業を展開していくのかについて、矢野さんに伺った。
やはり業界内に働き掛けるのも大切ですが、メルカリさんのように他業界からの刺激で動いたこともあり、他業界と一緒に事業を行うことも一つの方法だと考えています。変に業界知識がない方が、よりフラットな目線、ユーザー目線で事業構築ができるとだと思います。
例えば、今って民泊やホテルの建設ブームになっていますが、いつか処分をしなければならなくなった時、そこに置かれた家具って廃棄するしかない。
でもそこで僕たちと組み、宿泊施設で使われていたものをウチで引き取って修理することで、今後は一般の方が安く購入できるようになったら、流通サイクルもゴロンと動き出すと思うんですよ。
元々ホームユースメインの家具屋の我々の商品群は、住宅や宿泊施設との親和性が高いと思いますし、僕たちはどんな方とでも組んでいけると思っています。
ですからホテル業界や不動産業界の企業などとタイアップし、一緒に事業をやっていければいいなと。そうすることで家具業界が少しずつ変わってくると信じています。
そもそも10年買い替えが行われない中で、3年くらい下取りをして差し上げられたら、次の買い物需要の喚起になります。流通速度が3倍になれば、単純にですが、流通量も3倍近くになると思うんです。
時代の変化とともに自らを変えていく
僕たちが修理を始めた時は「修理できるの!?」という人が圧倒的に多かったんですよ。当時、家具修理ってネットで検索しても、全く会社が出て来なかったですからね。それに修理が有料であることに驚く同業者さんも多くいます。無償で車の修理はしてもらえないのに、です。
でも僕ら世代って、例えば4万円で買ったテーブルが少し傷んで修理となった場合、費用が5~6万掛かると聞いたら諦めてしまうと思うんです。最近はDIYが流行っていることもあり、自分でやろうという人も増えています。材料費等考えたら、職人にお願いしたほうがキレイですし安く済むのですが、それでもDIYでやりたいという方は多い。
だから今後は、自分たちで材料を持ち寄り自由にDIYができるよう、作業場を開放してあげよう思っています。
作業場には職人がいるので、できないところだけ職人に頼んでもらったり、別注家具を作りたいとなればアドバイスしたり。そうして職人と接触する機会が増えることで、もっと家具に興味を持ってもらえると思いますしね。
自己肯定感に溢れたライフスタイルを満喫していただき、一緒に家具作りを楽しむ。そういった「学びと体験と共創」をテーマに時代に合わせたサービスをしていくことで、モノを作る苦労やモノを大切にする心、職人の価値もわかってもらえるし、それがサスティナブルの啓蒙活動にもつながり、業界がもっと注目してもらえるのかな、とも思います。
お客様のために、職人や材料屋が行き続けられる業界として再構築、再発展できるよう尽力していきたいです。
最後に
今回のインタビューにより、家具業界の仕組みや現状はもちろん、それらを取り巻く環境や新しいビジネスのカタチを知ることができた。
人々のライフスタイルや価値観の多様化に合わせ、時代と共に柔軟に変化していく同社の挑戦は、きっと家具業界だけでなく、他業界もに大きく影響するはずだ。
業界の常識がガラっと変わる日も、そう遠くはないだろう。
【Vol.3】大切な家具に、再び命を吹き込む瞬間に続く
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(HOTELIER編集部)