後継者不在に悩むホテル・旅館の課題を解決、「ビズリーチ・サクシード」の承継公募M&Aプラットフォーム

政府が掲げた観光立国の実現に向け、近年は全国各地で訪日外国人観光客が増加。それに伴いホテルや旅館だけでなく、民泊、ゲストハウスといった多様化するニーズにあわせた宿泊施設も急増し、日本は現在、宿泊施設の開業ラッシュとなっている。

そんな明るいニュースが飛び交う一方で、経営難や少子化などの理由から後継者が見つからず、止む無く廃業せざるを得ない宿泊施設が増えてきていることをご存知だろうか。

中小企業基盤整備機構が実施した「2017年3月 中小旅館業の経営実態調査」によると、ホテル・旅館業界の回答者の50.6%が「後継者は決まっていない」と回答した。またHOTELIERでも以前、2019年1月発表の日本政策金融公庫による「事業承継に関するアンケート調査」のニュースを取り上げており、後継者不在による問題は、宿泊業界に留まらないことが伺える。

そこで、「後継者不在」という大きな社会課題を解決すべく立ち上がったのが、人材サービスを展開する株式会社ビズリーチだ。

「ビズリーチ・サクシード」は、経営の1つの選択肢として可能性を広げられるサービスだと語る、ビズリーチ社 南代表

今回HOTELIER編集部が訪れたのは、2017年11月に同社が価値ある事業を未来につなげていくことを目的に運営開始した、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」による「承継公募」の背景・概要についての記者発表会。

「ビズリーチ・サクシード」は、“譲渡企業”と“譲り受け企業”を結ぶオンラインプラットフォームだ。譲渡企業は匿名で会社や事業の概要を登録でき、譲り受け企業はその情報を検索・閲覧が可能。これにより、譲渡企業は経営の“選択肢のひとつ”として「事業承継M&A」を早期から検討でき、経営者の選択肢を広げることができる。2017年11月のサービス開始以降、すでに譲渡案件登録数1,160件以上、累計譲り受け企業登録数は2,500社以上にものぼり、順調に登録数を伸ばしている。

ちなみに、同社が新しい事業を立ち上げる際に最も大切にしていることは、課題の抽出だという。このたびのサービスが立ち上がったのも、主軸である人材サービス事業において全国の経営者や自治体から様々な相談を受けていく中で、事業承継問題という課題が浮き彫りになったことがきっかけだ。

「後継者不在により譲渡を検討している企業と、成長戦略の一部としてM&Aを検討している企業は、非常に相性が良い。そのニーズをインターネット上で情報交換できる一つのプラットフォームという、新しい時代の技術を持って可視化することで解決し、価値ある事業を未来につなげられると私たちは考えております。」とビズリーチ社 代表取締役社長の南氏は語った。

同サービスを通じて、これまで出会えなかった潜在的なニーズを掴むことができると語る、ブリーズベイホテル社 津田代表

既に同社では「承継公募」第一弾として、2018年11月に株式会社ゴーゴーカレーグループによる後継者不在のカレー名店の承継公募を実施。開始直後より話題となり、全国から応募があったという。

第二弾である今回、譲り受け企業として手を挙げたのは、横浜のブリーズベイホテル(BBH)を旗艦店とするブリーズベイホテル株式会社。ブリーズベイホテル社は、2004年よりホテルや旅館の運営と譲り受けに取り組んできた企業で、現在は全国で120軒の宿泊施設を運営している。

同社の強みは、様々なホテル経営で培ったサービス運営マニュアルや、メリハリのある投資・コスト削減など、ホテル・旅館経営に関する多くのノウハウを持っていること。事業承継後も既存のスタッフを中心に組織づくりを行うことで、各宿泊施設の魅力を活かしつつ価値提供を高めている。

代表取締役の津田氏は「後継者不在に悩む宿泊施設が全国にある中で、これまでは事業承継が顕在化された施設としか出会えなかったことが課題だった。同サービスは、そういった悩みを抱える施設との出会いの場であり、これまで出会えなかった潜在的な旅館・ホテルと出会いたい。」と述べた。

このたび行われる「承継公募」は、全国の宿泊施設が対象。応募期間は2019年3月13日~5月17日だ。

富山県の老舗温泉旅館「永芳閣」三代目女将・平田氏(写真中央)も交えたパネルディスカッションの様子

今回の記者発表会には、2014年にブリーズベイホテル社が事業承継した富山県の老舗温泉旅館「永芳閣」の三代目女将・平田氏も参加しており、パネルディスカッションでは、「永芳閣」を事業承継するにあたってのプロセスなども語ってくれた。

全国で深刻化する「事業承継問題」に対し、オンライン上で双方の出会いの場を用意したビズリーチ。同サービスは、決して事業承継を決定するものではなく、後継者不在の経営者が“経営の1つの選択肢として知り、可能性を増やすこと”であると南氏は語っていた。

まだローンチから間もないサービスだが、後継者不在に悩む宿泊施設はもちろん、M&Aを検討する企業など多くの人に知ってもらい、業界全体で価値ある事業を残し未来につなげていけることを期待したい。

【参照サイト】
・中小旅館業の経営実態調査
・事業承継に関するアンケート調査結果

(HOTELIER編集部)


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