星野リゾートと奈良県明日香村が「地域活性化包括連携協定」を締結、2023年に宿泊施設を開業予定
星野リゾートと奈良県明日香村が、2019年8月15日に「地域活性化包括連携協定」を締結したことが分かった。2016年10月28日に締結した「企業立地に関するパートナーシップ協定」に加え、新たな協定を結ぶことで相互の連携を強化する考えだ。また、2023年に開業予定の地域に根ざした宿泊施設の開発計画を進めていくとしている。
奈良県明日香村は、推古天皇や聖徳太子、蘇我馬子、小野妹子などの偉人が活躍し、日本の中央集権律令国家が誕生した場所だ。石舞台古墳、キトラ古墳、高松塚古墳、日本で最初に本格的な伽藍配置を取り入れた法興寺(飛鳥寺)など、多数の史跡が存在する。明日香村は地域の景観を守るため、通称「明日香法」と呼ばれる特別措置法により、日本国内で唯一、行政区域内の全域が歴史的風土保存地区に指定されている。これらは日本が世界に誇れる観光資源であり、大きな潜在力を持つ地域だ。
宿泊施設の建設予定地は近鉄「飛鳥」駅西側に位置する。周辺には牽牛子塚(けんごしづか)古墳、真弓鑵子塚(まゆみかんすづか)古墳、マルコ山古墳、岩屋山古墳などの歴史資源に恵まれている。しかし、明日香村に訪れる年間約80万人の観光客は村東部に集中しているため、村西部の魅力を発信し村内周遊を促進する必要がある。
そこで、明日香村全体を屋根のないフィールドミュージアム「明日香まるごと博物館」として捉え、2018年9月に近鉄「飛鳥」駅前に開設した道の駅「飛鳥」をそのエントランスと位置づけている。また建設予定地周辺では、村の農業振興施設の建設や牽牛子塚古墳の整備が進められ、宿泊施設の開業に加えて、近鉄「飛鳥」駅西側を含めたエリアの産業振興および地域活性化を図っていく考えだ。
新規宿泊施設の建設にあたり、地権者の合意が得られ施設計画の基本設計が進められている。宿泊施設は明日香村の町並みを踏襲し、瓦屋根で低層の分棟型になる予定だ。また、2018年より星野リゾートと明日香村の間で職員の人事交流を行い、相互の環境を知り、地域の理解を深める機会を設けているという。「地域が本来持つ魅力を発掘・発信し、地域に根ざす宿泊施設として地域活性化に貢献できるよう、星野リゾートと明日香村の連携を深め、協力しながら準備を進めてまいります」と述べている。
奈良県は全国の中でも宿泊施設と客室数が少ない。厚生労働省の調査によると、2017年度は旅館340軒・客室数4,788室、ホテル66軒・客室数4,409室だった。奈良県が行った『平成29年 奈良県宿泊統計調査』によると、奈良県内の宿泊施設数447軒のうち、明日香村が含まれる“Bエリア”の宿泊施設は旅館20軒・ホテル8軒・簡易宿所30軒の合計58軒ある。この58軒のうち39軒は定員30人未満の宿泊施設だ。
奈良県は『県内宿泊客増加に向けた観光の振興』の中で、2019年に延べ宿泊客数を280万人に、2019年度に客室数を1万室にする目標を掲げている。主な取り組みとして、「上質な宿泊施設の整備」や「多様なニーズに応える宿泊施設の整備」を挙げている。加えて、歴史文化資源を活用した観光資源の開発に取り組むとしており、奈良の魅力をより一層向上させ、2019年に観光入込客数を5,000万人にする目標を掲げている。
奈良県の2017年の延べ宿泊者数は全国46位の265万人、外国人延べ宿泊者数は全国24位の39万人、観光入込客数は全国14位の4,420万人だった。目標達成に向け、宿泊施設の新規開業や、地域の魅力をアピールし積極的に誘客する必要がある。
2023年に明日香村にて開業予定の宿泊施設は、客室数はまだ明らかになっていないが、明日香村をはじめ奈良県全体の観光客・宿泊客増加に繋がることを期待したい。また『星のや』をはじめとする4ブランドを中心に、国内外で38施設を運営する星野リゾートと協力し開発するという点も注目を集めそうだ。
星野リゾートは奈良県にて、重要文化財「旧奈良監獄」を活用した“上質な宿泊施設”を実現すべく、ホテル仕様の改修設計に着手するなど準備を進めており、2021年内の運用開始を目指している。関西エリアでは、2022年4月に「星野リゾート OMO7(おもせぶん) 大阪新今宮」を開業予定だ。
【参照記事】
星野リゾートと奈良県明日香村、地域活性化包括連携協定を締結 2023 年の宿泊施設開業を目指します
【参照サイト】
・星野リゾート進出検討に向け、奈良県明日香村とパートナーシップ協定締結
・【データ】旅館・ホテルの営業施設・客室数(2017年度) 厚生労働省調べ
・奈良県|奈良が有する観光資源や歴史・文化資源を活用し、県内への誘客を促進し、観光産業を振興します。
・奈良県|平成29年 奈良県宿泊統計調査
・星野リゾートと旧奈良監獄保存活用㈱による協定書の締結について
(HOTELIER 編集部)