2019年5月21日、メトロエンジン株式会社が総額約3億円の資金調達を実施したことを発表した。

同社の引受先は以下である（アルファベット順）。
・BEENOS株式会社
・森トラスト株式会社
・NECキャピタルソリューション株式会社※
・サムティ株式会社
・SBI AI&Blockchain 投資事業有限責任組合
・凸版印刷株式会社
・株式会社ベンチャーラボインベストメント※
（※価値共創ベンチャー有限責任事業組合を通じた出資）

同社は過去のデータ分析のみによる従来型のレベニューマネジメントではなく、過去データに加えて人工知能（AI）によるディープラーニングとリアルタイムのビッグデータ分析を用いたダイナミックプライシングのシステムを開発・提供している。同システムを用いたレベニューマネジメントツール『メトロエンジン』は、宿泊業界での導入が拡大している。また、同社の提供するホテル向け事業は、国内を代表とする主要なホテルチェーン30社以上と契約を締結している。

このほか同社が手掛けるサービスには、予約（コンバージョン）獲得に特化した予約エンジン『メトロブッキング』、民泊など物件の短期貸し出しに対応したクラウド管理ツール『民泊ダッシュボード』、短期賃貸物件のWEB掲載から契約まで一元管理できるクラウドツール『マンスリーエンジン』、ホテル特化型メディアサイト『ホテルバンク』がある。

昨今、ホテル業界以外においても、需給に合わせたダイナミックプライシングの認知が向上しており、あらゆる業界でダイナミックプライシングの導入機運が高まっている。ホテルの料金や航空券をはじめ、スポーツ観戦のチケット、テーマーパークの入場料金などにも導入されている。直近のニュースでは、家電量販店大手のビックカメラが、2020年度末をめどに全店舗でダイナミックプライシングを導入することが分かった。

メトロエンジンは企業理念に「需要予測とダイナミックプライシングでより良い世界へ」を掲げており、レンタカー業界や高速バス業界へもダイナミックプライシングの提供を開始するとしている。加えて、同社のデータを活用した賃貸不動産の賃料査定や、コインパーキングのダイナミックプライシング、小売店の需要予測などの分野でもサービス展開を図っていくという。

ダイナミックプライシングや独自データを活用した需要予測サービスについては、多くの需要が見込まれ今後も急拡大していくと考えられる。このたびの調達資本はこれらの分野に投下するといい、「圧倒的No.1を目指し、事業拡大に努めて参ります」と述べている。同社は2018年8月にも総額約7億円の資金調達を実施しており、人員拡大や技術開発へ投下し、ダイナミックプライシングの精度向上と同技術を活用した事業展開を加速すると述べている。

引受先のひとつである森トラストグループは、2016年に6月に発表策定した中長期ビジョン『Advance2027』において、新規投資事業やイノベーション創出の積極的な推進を方針の一つに掲げている。2017年10月より総額200億円の投資枠を設け、①スタートアップ企業の活動拠点となるコミュニティスペース整備、②不動産とITを融合させた「Re-Tech（リテック）」、観光やホテルとITを融合させた「Hospi-Tech（ホスピテック）」を中心に直接投資を行うCVC活動、③M&Aやベンチャー・キャピタルへの出資、これらを3本柱とする『新イノベーション投資戦略』を始動した。

同グループは今後について「コーポレートスローガン“Create the Future”のもと、未来のイノベーション創出を推進すべく、ビジネス環境の整備や、スタートアップ企業との協業による新たな事業創出などを通じて、わくわくするような未来の創造を目指してまいります」と述べている。

同じく引受先のひとつであるサムティは2019年1月、同社のグループ会社である株式会社サン・トーアが運営する4棟のホテルへ『メトロエンジン』を導入すると発表した。同グループは2018年9月に策定した新中期経営計画において、ホテル事業の強化を重点戦略のひとつとして設定しており、その一環として同サービスをホテルへ導入するという。

メトロエンジンは、2018年8月の資金調達と今回の資金調達を合わせ、総額10億円にも上る資金を調達した。幅広い分野でダイナミックプライシングを展開していく方針であり、今後の動向に注目が集まりそうだ。

■「メトロエンジン」公式サイトはこちら。

【参照記事】
・メトロエンジン、3億円の資金調達を実施
・森トラストグループ 新イノベーション投資戦略　AIとビッグデータを用いたダイナミックプライシング支援ツールを提供するメトロエンジン株式会社に出資
・メトロエンジン株式会社、７億円の資金調達を実施
【参照サイト】
・森トラスト株式会社｜メトロエンジン株式会社に出資
・家電の価格、随時上げ下げ　ビックカメラが「電子棚札」

（HOTELIER 編集部）