JR四国とAirbnb Japanが業務提携、簡易宿所と体験型コンテンツで世界に四国の観光情報を発信
2018年10月29日、JR四国と民泊仲介の大手・米Airbnbの日本法人であるAirbnb Japan株式会社(以下:Airbnb)が、観光事業で包括的業務提携すると発表した。鉄道会社とAirbnbが組むのは初めてである。さらにJR四国は、11月17日に四国内初となる簡易宿所「4S STAY 阿波池田駅前」を徳島県三好市に開業する。
両社は「地域に根ざした宿泊」や「地域の風土や文化を楽しむことが出来る体験」を充実させ、四国の地域観光を盛り上げると同時に地方経済の活性化にも力を入れる。酒造りや農業など体験型の観光商品を共同開発し、JR四国の簡易宿所と合わせて四国の観光情報を世界に発信する。加えて、四国への外国人旅行者を増やし鉄道収入の増加にもつなげる狙いだ。
「4S STAY 阿波池田駅前」は3階建ての建物で、客室を全5室用意し最大27名が宿泊できる。1階は主に飲食エリアとなり、宿泊者以外も利用可能だ。1室1名あたりの利用料金は5,500~8,700円(通常・閑散期)。阿波池田駅は外国人観光客に人気の祖谷・大歩危エリアが近いことから、地元と連携し、同駅周辺の酒蔵や古い街並みを活かした体験型観光商品のラインアップ充実を図る。開業日である11月17日には、同施設でオープニングセレモニーが開催され調印式などが行われる予定だ。
なお、同施設はJR西日本が旅館業法の簡易宿泊営業許可を取得し、建物所有者と賃貸借契約を締結している。すでに三好市内で民泊および飲食施設を運営するオウライ株式会社に宿泊業務を委託し、オウライが運営管理を行うものだ。
同施設の開業に向けた集客をAirbnbが支援するとともに、体験コンテンツの共同開発や世界に向けた発信も行う。予約はAirbnbだけでなく「楽天トラベル」や「じゃらん」などでも受け付けるが、体験型の観光商品を合わせた事業はAirbnbのみで展開する。Airbnbには、酒造り体験およびオリジナルラベルの作成、着付けや茶道、街歩きなど施設から徒歩圏内で体験できるコンテンツのほか、祖谷・大歩危エリアの体験コンテンツも順次掲載予定である。
JR四国は2018年4月、同社の簡易宿所の第一号店となる「4S STAY 京都九条」を開業した。京町屋風の木造2階建ての施設が3棟あり、それぞれ一棟貸しで各棟5名程度宿泊できる。このたびの提携の枠組みに同施設も含むが、JR四国の半井真司社長は高松市内で行われた記者会見で「四国の観光促進につなげていきたい」と強調した。
両社はこのたびの提携において、より多くの観光客に四国エリアを旅行してもらうため、地域の空き物件などを活用した宿泊施設および体験プログラムの共同開発、宿泊および体験ホストへの支援を実施していく。またJR四国は、日本地域に根ざした住宅宿泊事業法(民泊新法)の更なる発展とシェアリングエコノミービジネスの拡充に向けた事業推進を行う『Airbnb Partners』へも参画予定だ。人口減少により四国在住者の鉄道利用の伸びは期待しにくいが、半井社長は「インバウンドは今後も底堅く、期待できる」と述べ、簡易宿所による観光客の受け皿づくりを進める方針だ。
JR四国の2018年4~9月の上半期の旅客収入は、西日本豪雨や台風などの自然災害が影響し、前年同期比7.5%減の183億円であった。JR四国管内では計5線・134カ所(2018年7月27日時点)が被災し、7月30日の発表では復旧に要する費用は四国全線で約20億円と見込まれている。そんな中、同社の地域に根ざした積極的な宿泊事業への取り組みは、四国観光や経済を盛り上げていく大きな光になるだろう。
近年、訪日外国人は宿泊施設の質だけでなく「体験」にも重きを置いており、施設と観光商品をセットで売り込み四国の魅力発信に繋げることで、観光はもちろん地域経済の活性化にも期待できそうだ。
■「4S STAY 阿波池田駅前」概要
所在地:徳島県三好市池田町サラダ1804番9
開業日:2018年11月17日
建物:木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造、3階建て
建物延べ床面積:253.82平方メートル
宿泊エリア(1階一部・2階):5室で最大27名が宿泊可能
飲食エリア(1階):飲食店「heso salon」
【参照記事】
宿+体験 共同開発へ JR四国、エアビーと包括提携
【参照サイト】
JR四国とAirbnbの提携について~四国の観光資源を世界に向けて発信へ~
「4S STAY 阿波池田駅前」の開業及びオープニングセレモニーの開催について
(HOTELIER 編集部)