JLLが東京のホテル市場の動向を発表、5ツ星ホテルは更なるパフォーマンス改善の見込み

総合不動産サービス大手のJLLは2019年6月5日、日本のオフィス、リテール(店舗)、ロジスティクス(物流)、ホテル市場の空室・賃料・価格動向、需要・供給動向および12ヵ月予測をまとめた調査レポート「ジャパン プロパティ ダイジェスト(JPPD)2019年第1四半期」を発表した。

このうち、東京のホテル市場の動向について見ていく。

東京のホテル市場は、インバウンド需要の拡大が旺盛な宿泊需要を創出している。2018年の訪日外国人客数は3,100万人(前年比8.7%増)となり、過去最高記録を更新した。同年は自然災害が多く発生したものの、アジア経済の中心地であり旅行先としても人気が高い東京では、外国人レジャー客の宿泊需要の増大が進んだ。同年の都内延べ宿泊者数は5,700万人(前年比5.4%増)となった。全宿泊者数の37%を占める外国人宿泊者数は前年に比べ12.9%増加し、日本人宿泊者数は前年に比べ1.4%増加した。

4ツ星ホテルおよび5ツ星ホテルの新規供給は限定的だった。2019年第1四半期は、ラグジュアリーホテルの新規ホテル供給は無かった。同年の新規ホテル計画としては、9月に再開発による開業が予定されている『The Okura Tokyo』の「プレステージタワー」および「ヘリテージウィング」2棟の合計508室が挙げられる。

また今後数年間で、複数のラグジュアリーホテルの新規供給が予定されている。このうち代表的な計画としては、2020年開業予定の「フォーシーズンズホテル大手町」、虎ノ門および銀座でそれぞれ開業予定の「エディションホテル」、2022年開業予定の「ブルガリホテル東京」が挙げられる。

運営パフォーマンスについては、客室単価(ADR)の改善が、1日当り販売可能客室数当り宿泊売上(RevPAR)の成長に貢献した。東京の5ツ星ホテルの運営パフォーマンスは、RevPARが2019年初来2月までの累計で前年同期比3.6%増加した。客室稼働率は前年同期比ー0.5%の微減となったが、前年同期比4.3%増加を記録したADRの上昇がパフォーマンス改善に貢献した。

ホテル売買取引については、東京の5ツ星ホテルの売買取引は見られなかった。投資家の投資意欲は強い一方で、全国的に売却案件が少ない状況が続いているという。

12ヶ月の見通しについては、世界的スポーツイベントにより更なるパフォーマンス改善が見込まれるとしている。2019年のラグビーワールドカップに続き、2020年にオリンピック・パラリンピックを控える東京では、5ツ星ホテルマーケットの更なるパフォーマンス改善が見込まれる。今後12ヶ月間のホテル投資マーケットに関しては、2020年以降のRevPAR成長率が鈍化すると見込み、売却の検討を始める機関投資家が出てくる可能性があり、取引件数が再び増加すると考えられる。

JLL執行役員・ホテルズ&ホスピタリティ事業部長の沢柳知彦氏は、次のように述べている。

「都内の5ツ星ホテルは2019年第1四半期にパフォーマンス成長ペースが伸び悩みましたが、第2四半期以降は、桜の開花時期が長く、花見目的のインバウンド需要を多く取り込めたことや、今後開催される世界的スポーツイベントを契機にパフォーマンスの回復と更なる成長が見込まれます。ホテル投資マーケットについては、東京オリンピック後のRevPAR成長ペース鈍化を見据えて譲渡益確定を見込んだ売却を検討するホテル投資家も現れており、2019年は活発なホテル取引が期待されます。」

同社が2019年3月に発表したレポート「Hotel Investment Outlook 2019」によると、アジア太平洋地域における2019年のホテル投資額は前年比15%増の95億米ドルで、世界3地域(アメリカ大陸、ヨーロッパ・中東・アフリカ、アジア太平洋地域)の中で唯一投資額が増加すると予測している。

同レポート発表時、日本のホテル投資市場について沢柳知彦氏は、「日本における2018年の第三者間ホテル売買は低調に終わりましたが、これは投資家の興味が薄れたわけではなく、大型ホテルの投資機会がなかったからです。今年は100億円を超える大型案件が既に複数件動いており、取引マーケットの活性化が期待されます」と述べている。

2019年3月(速報値)時点の都道府県別の客室稼働率では、東京都が全体で最も高い82.6%となり、前年同月に比べ1.7%増加している。さらに延べ宿泊者数も全国1位の581万人泊、外国人延べ宿泊者数も全国1位の215万人となった。今後のスポーツイベント開催も後押しし、訪日外国人客の増加や宿泊施設の需要はますます高まっていくだろう。

【参照記事】
・[ジャパン プロパティ ダイジェスト 2019年第1四半期]
・JLL、2019年アジア太平洋地域のホテル投資額は前年比15%増と予測
【参照サイト】
宿泊旅行統計調査(平成31年3月・第2次速報、平成31年4月・第1次速報)

(HOTELIER 編集部)


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