観光地経営組織「せとうちDMO」、インバウンドに焦点を当てた宿泊施設開発本格化
広島県や香川県など瀬戸内7県で構成する観光地経営組織「せとうちDMO」が、人口減に伴い増加する空き家を活用した宿泊施設の開発を本格化し、外国人観光客誘致を目指すという。
DMOは、瀬戸内地域での外国人延べ宿泊者数を20年に600万人泊とする目標を掲げている。これは、120万人泊だった13年の5倍の数。しかし、多くの観光客は京都や大阪などに宿泊し、宮島や道後温泉など有名な観光名所を日帰りで回るため宿泊に伴う飲食など観光消費が伸びにくいという課題がある。そこで、瀬戸内の愛媛県内子町や広島県尾道市のように、昔ながらの建物や自然景観を残した地域に着目。こうした地域の歴史的建造物の空き家を宿泊施設として提供することで、瀬戸内の観光地を数日かけて周遊する滞在型観光を増やす取り組みを始める。
4月には旅行予約サイト運営の米エクスペディア子会社で、民泊などの仲介大手の米ホームアウェイと、インバウンド観光推進で業務提携。すでに愛媛県内子町の古民家を活用した簡易宿所2軒がホームアウェイのサイトで予約受付を開始している。また、マーケティングデータ情報の共有を図ることで国籍や宿泊日数、宿泊単価などの情報を基にした「インバウンドに最適な宿」の開発が可能になるという。
瀬戸内地域で空き家になっている歴史的建造物は、約30万軒にも及ぶ。DMOを構成する瀬戸内ブランドコーポレーション(本社:広島県広島市)の水上圭社長は、「2021年までの5年間で100棟の歴史的建築物を活用した宿泊・商業施設の開発を目指す」と抱負を語っているという。一方で、DMOは施設の運営自体は空き家の持ち主や地域の人材に任せる方針をとっており、人口流出が激しい地域では運営者探しが課題となり得る。外部の事業者に委託することも想定できるが、水上氏は「地域で雇用を生み出すことも目的の一つ。原則、その地域の人たちに運営を任せたい」意向だ。
最近では、不動産開発のマリモ(本社:広島県広島市、代表取締役:深川 真氏)と協力してビジネスホテルの開発事業に取り組むことも明らかになった。マリモが2018年夏の開業を目指して開発中のビジネスホテル「ホテルビスタ広島」について、開発資金の一部をDMOが運営する「せとうち観光活性化ファンド」から拠出する。同ファンドからビジネスホテル事業に資金を拠出するのははじめて。拠出額は非公開だ。
今後は、DMOを通じて旅行会社などと組み、同ホテルの宿泊と瀬戸内観光をセットにした旅行商品の開発などPR活動でも協力していくという。
【参照記事】
・せとうちDMO、空き家の古民家を外国人向け宿泊施設に
・観光組織「せとうちDMO」 広島でホテル開発 地元不動産と
(HOTELIER 編集部)