日本初のムスリム100%対応「Jesly Villa Tokyo」が木更津にプレオープン、男女別の礼拝堂など完備
JY Global株式会社は2019年8月20日、日本初のムスリム100%対応宿泊施設『Jesly Villa Tokyo(ジェスリ ヴィラ トウキョウ)』と、100%ハラールレストラン『Paprika(パプリカ)』を千葉県木更津市にてプレオープンした。
近年の訪日外国人の増加に伴い、ムスリムの来日も増えている。中でもマレーシアやインドネシアをはじめとした、ムスリムの多い東南アジアからの訪日旅行者が増加している。マレーシアからの訪日旅行者は2012年の13万人から2017年には44万人に、インドネシアからの訪日旅行者は2012年の10.1万人から2017年には35.2万人となり、この5年で増加し続けている。
政府は増加するムスリム旅行者の受け入れのため、『訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン』として具体的な施策をまとめた。要点は「受入環境整備に向けた知識啓発」「食事環境の整備」「礼拝環境の整備」「ムスリム旅行者への情報提供」の4点である。
このうち、宿泊施設が対応すべき主な課題として「食事環境の整備」と「礼拝環境の整備」が挙げられる。プレイヤールーム(礼拝堂)の設置施設は数年前に比べると増えているものの、1.広さが十分ではない、2.男女別になっていない、3.ハラールレストランとプレイヤールームが遠い、4.ハラールレストランと謳っていても「実際にはアルコールや豚肉が店内で提供されている」「一部のメニューのみがムスリム向けだった」など、ムスリム旅行者にとって安心できる環境ではない場合もある。
そこで同社は「ムスリムが食と礼拝の不安なく、安心して旅を楽しめる宿泊施設」を作ろうと決心した。「木更津市、木更津市観光協会とも連携して、政府の掲げる円滑なムスリム旅行者対応を実現し、さらには地域社会の多様性(ダイバーシティ)を育むべく、この取組を進めています」と述べている。
『Jesly Villa Tokyo』は、羽田空港からアクアライン利用で20分でアクセスできる木更津市金田に位置する。“心から安心して楽しめる旅に”をコンセプトに、ムスリムの人たちが他のどこのホテルよりも安心して過ごせる場所として、ムスリム旅行者のニーズに応える設備やサービスを提供する。
同社の取締役兼『Jesly Villa Tokyo』支配人のモハマド ジャリール モハマド ジェスリ氏自身もムスリムだ。宿泊エリア「ヴィラ」は、ジェスリ氏の経験と人脈を活かしてムスリム200人にヒアリング調査を実施し、心から安心して快適に過ごせる空間づくりを徹底した。
客室は全15室。スイートルーム2室、男女別のシェアルーム2室、洋室10室、和室1室を用意した。一部屋ごとに壁紙・フロアカーペットのデザインが違うといい、ムスリム旅行者が快適に過ごせるデザインにこだわって選んだ。広々とした浴槽つきの浴室とトイレは別室となっている。また、スイートルームはアイランドキッチンとバルコニー付きだ。宿泊者自身で食事を作ったり、シェフを呼び料理をしてもらうなど、家族や友人達と特別な時間を過ごせる空間を演出する。
施設内には、広々とした男女別のプレイヤールーム(礼拝堂)を完備している。日本には“お祈り(プレイ)”ができるホテルが少なく、またお祈りの部屋はあるが一つの部屋として用意されていて男女別でのお祈りをするのが困難、という施設がほとんどだ。同施設ではウドゥー(手や足、口を清めるために洗うこと)をできるように男女別で「洗い場」を用意したほか、礼拝マット、キブラ(メッカの方向を示すサイン)、タオル、冷暖房も完備し安心してお祈りできる環境が整っている。宿泊者は24時間利用可能で、6時~24時の間は近くに来ているムスリム旅行者も無料で利用できる。
レストラン『Paprika』のシェフであるフェルダウス氏もムスリムである。3つ星ホテル「ザ ゼニス ホテル」「シャングリ・ラ ホテル」でシェフをしていたが、同レストランの専属シェフとして来日した。同社は「ムスリムのシェフが作る食事ほどムスリムにとって安心な食事の情報はない」と考え、アルコールと豚を完全排除し、ロティチャナイ、ナシレマ、ロティティシュ、テタレなどを提供する。提供時間は6時30分~22時(15時~17時は休憩)で、ランチタイムもある。
また、“旅行のプロ”である現地旅行代理店100社以上と契約しており、今後もムスリムが安心できる旅行ツアー企画を準備していくという。羽田空港からの無料シャトルバスも計4便毎日運行するため、到着から帰国前まで時間を有効に使い日本を満喫できるだろう。このほか、国内通話・通信無料のスマートフォンを無料で貸し出し、外出先から施設の内線へかけたり、宿泊者の代わりにホテルクルーが予約を取るなどコンシェルジュサービスも行うという。
2020年以降にインバウンド需要が増えるイベントも控えていることから、今後ますますインバウンドが増加することが見込まれる。同社は「ムスリムをはじめ食事に制限のある方々など様々な人々が心から安心して日本を楽しめるよう今後も宿泊施設・レストランを計画中です」と述べている。
『訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン』によると、キリスト教に次ぐ規模のムスリムは2010年時点で16億人おり、2020年には19.1億人、2050年には27.6億人になると予想される。また、ムスリムによる旅行市場規模は、2015年の1,510億ドルから2021年には2,430億ドルへ拡大すると予想され、日本にとっても重要な存在である。
この度プレオープンした『Jesly Villa Tokyo』は、ムスリム旅行者の日本での礼拝や食事に対する不安を無くした宿泊施設だ。充実したサービスはもちろん空港へのアクセスも良いことから、多くのムスリム旅行者が訪れそうだ。
日本では近年、ムスリムに対応する飲食店や宿泊施設が徐々に増えてきている。2019年7月には、「ドーミーイン・global cabin浅草」がビジネスホテルで初めてハラール認証の三ツ星を取得し、全ての食事がハラール対応となった。ムスリムは今後も宿泊業界にとって重要なテーマとなるだろう。
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【参照記事】
<日本初!>200人のムスリムの声からつくり、 100社旅行エージェントが認めた“食・礼拝”不安なしの宿泊施設 「Jesly Villa Tokyo」&100%ハラールレストラン「パプリカ」 8/20(火)千葉・木更津にプレオープン!
【参照サイト】
観光庁|ムスリム対応に関する取り組みについて
(HOTELIER 編集部)