国内のタバコ離れと訪日客ニーズを受け、ホテルの全面禁煙の動きが加速
近年の禁煙ブームによる国内の喫煙率低下や、インバウンドの禁煙志向の高まり、そして2020年東京五輪・パラリンピックや2025年の大阪万博も見据え、国内のホテルは改装や新設にあわせ、客室内を全面禁煙にする動きが進んでいる。
阪急阪神ホテルズは2019年1月23日、全国の直営18ホテルのうち15ホテル・全4380室をリニューアル。今年8月末までに禁煙化すると発表した。これは直営の全ホテルのうち、約9割の客室数に当たる。禁煙化を進める理由について、ニーズの高さだと広報担当は述べている。
同社が運営する「ホテル阪急インターナショナル」では、昨年度の禁煙客室の平均稼働率は94.6%と、喫煙室を2.7ポイント上回り、禁煙室不足が常態化した。他直営ホテルでも同様で、同社は「特に訪日客のニーズが強い。東京五輪などに合わせ、増やしていく」と話す。また、2020年初春に開業予定の「ヨドバシ梅田タワー(仮称)」を含む21年春までに新設する直営6ホテル(約2200室)も全室禁煙とする。
大阪・北区の「リーガロイヤルホテル」などを運営する株式会社ロイヤルホテルも同様で、東京・新宿区の「リーガロイヤルホテル東京」の全客室を4月1日に、大阪・西区の「リーガ中之島イン」を来年度中にそれぞれ全室禁煙化する予定。「先に予約が埋まるのは禁煙の客室。国内客にも好評」と広報担当者は話す。
上記の他にも、昨年6月開業の大和ハウス工業系の「ダイワロイヤルホテルグランデ京都」や、昨年9月にオリックス不動産が開業した「クロスホテル京都」でも全室禁煙化にするなど、宿泊特化型ホテルでも着々と禁煙化は進んでいる。クロスホテル京都の広報担当は、「ウェブサイトに全室禁煙と告知しているが、訪日客から禁煙室はあるかとの問い合わせが入る」と語った。
かつては男性ビジネスマンをメインターゲットにしていたビジネスホテルにも変化がある。「コンフォートホテル」を展開するチョイスホテルズジャパンは、昨年5月31日の「世界禁煙デー」に自社が運営する全国56ホテル・8990客室の全面禁煙化を達成したことを発表した。この試みは、全国50軒以上の規模を展開するホテルとしては日本初だという。
昨年7月30日に日本たばこ産業(JT)が発表した「2018年全国たばこ喫煙者率調査」によると、2018年4月時点の推計喫煙人口は1880万人で前年と比べ37万人も減少。喫煙者率は同0.3ポイント減の17.9%となり、昭和40年以降のピーク時(1966年/昭和41年)の約49%と比較すると、大幅に喫煙率が減少したことがわかる。
今年7月からは、一部公共施設などの受動喫煙対策を強化する「改正健康増進法」も施行されるなど、今後も“たばこ離れ”が進むとみられる。インバウンドニーズの高まりとともに、国内ホテルもますます禁煙化が加速しそうだ。
【参照記事】
・ホテルの禁煙化が加速 喫煙率低下、訪日客ニーズ受け
【参照サイト】
・2018年「全国たばこ喫煙者率調査」、男女計で17.9%
・「全室禁煙」のビジネスホテルは成功するか? 「喫煙者率20%時代」に考える、ホテルの分煙問題
・ビジネスホテルの「全客室禁煙化」は進むのか
・全ホテル全室禁煙化|コンフォートホテル
(HOTELIER編集部)