IoTを駆使したホステルの先駆者「and factory株式会社」茶置氏 -&AND HOSTEL Vol.01-
日本で初めてのIoT体験型宿泊施設を体現したスマートホステルの3号店「&AND HOSTEL UENO」。今回、そのIoTを駆使したホステルの企画を行なっている会社「and factory株式会社(以下、and factory」のIoT事業部マネージャー、茶置 貴秀氏に取材してきました。IoTを駆使したホステルとはどのようなものか? そもそもIoTとは何か? などお聞きしてきました。
and factory株式会社、&AND HOSTELについて
and factoryはどんな会社ですか?
and factoryは、IT企業なんです。社内の約半数はエンジニアで社員数は50名程。主軸の事業としてアプリ開発を行っているんですが、現在は漫画アプリなど、様々なアプリをリリースしています。内側ではIT、外側ではホステルの企画・運営を行なっています。その中に不動産事業部があるんですが、今後不動産をやっていくにあたり、「IT×不動産」という掛け合わせは、よりサービスが強いものになるのではと思い、「&AND HOSTEL」の事業がはじまりました。
「IT×不動産」ということですが、なぜIoTを取り入れようと思ったんですか?
現在、東京五輪がある2020年までに、訪日外国人を4,000万人取り込めるような国策が謳われていますが、現状、東京や大阪、福岡などの都心部は宿泊施設不足という問題を抱えています。そこで始まったのが、民泊やホステルなどの簡易宿泊施設の開業です。投資家にとっても、都内であれば2.5億から5億円の投資額ではじめられる簡易宿泊施設は比較的気軽ということもあり、そこで差別化をはかれる宿泊施設をつくろうと思い、会社の強みであるIT事業を活かし、IoTを取り入れたホステル「&AND HOSTEL」が誕生しました。
「&AND HOSTEL」は現在何店舗ありますか?
現在は3店舗あります。1店目は2016年8月に福岡に「&AND HOSTEL」。2店目は2017年4月に浅草北に「&AND HOSTEL ASAKUSA NORTH」。そして3号店目のここ、上野「&AND HOSTEL UENO」となります。それぞれIoTを体感できる部屋を完備しており、ラウンジなどでも企業と協業しIoTを使った機器を置いております。後ほど、IoTについてはお話しますね。
1号店目に福岡を選んだのはなぜですか?
福岡は、韓国や台湾などが近くアジアの窓口です。国家戦略特区に指定されているということもあり、この地を選びました。LCC(ローコストキャリア)も多く飛んでいますし、東京や大阪へ飛ぶよりも短い時間で福岡へ行けますしね。福岡の「&AND HOSTEL」が好調だったこともあり、今年東京へ進出しました。
&AND HOSTELでできる、IoTについて
初歩的な質問となりますが、IoTとはなんですか?
IoTは、Internet of Things(モノのインターネット)の略です。簡単に言えば、スマートフォン等を使って操作ができる機器のことを指します。現在、あらゆるメーカーからIoT製品が出ており、インターネットを通じて収集される情報を可視化することによって様々なことが便利になっています。身近なものでいうと、スマートフォンで知ることのできる天気や温度もIoTを駆使しているものです。
「&AND HOSTEL」の中で体験できるIoTとは?
3店舗のホステルにはそれぞれIoTルームがあります。客室に設置された、あらゆるIoT製品を1つのスマートフォンで操作、制御できる「&IoT Platform」をベースに、あらゆるシーンでIoTを体験することができます。
まず、IoTルームに宿泊のお客様には、チェックインの時にフロントでスマートフォンを渡し、ドアの開閉から、カーテンの開閉などをスマートフォン1つで行っていただきます。通常のIoTデバイスなら、鍵なら鍵、照明なら照明とバラバラに調整するのですが、弊社はメーカーと協業し、API開示をしてもらい統合されたアプリケーションを作って、1プッシュで複数のデバイスを操作できるようにしています。
具体的にはどんなことが「&AND HOSTEL」の部屋でできますか?
具体的には、部屋に入る時に鍵の解錠をすると思いますが、解錠と同時に部屋の明かりもつけることができます。通常のIoTなら鍵の解錠だけですが、一緒にしてしまえばスマートだなと思いまして…。あとは「おやすみモード」というのがあり、そのボタンを押すと、電気が消えて、カーテンが閉まって、ドアも閉めてくれ、さらにはエアコンが快眠モードになるんです。旅行中など何かと疲れることが多いと思いますが、1プッシュで心地良い眠りの環境が整う、まさに画期的なシステムなんです。
他にも、1,600万色の色がある電球の色合いを組み合わせて、宿泊シーンに合った雰囲気を何通りか設定しています。お客様はスマートフォン1つで気分に合わせて好きな照明シーンに変えることができます。
スマートホステルと掲げている以上、ただのIoTを配置するのではなく、スマートな宿泊の体験設計に力を注いでいます。
他に「&AND HOSTEL」で体験できるIoTはありますか?
「&AND HOSTEL UENO」では、ラウンジにAmazon様と協業し、Amazon Launchpadのショーケースを設置しています。宿泊者の方はもちろん、その他一般の方に触れていただき、購入することもできます。
IoTは、言葉だけ先走りしていて、いまいち「IoTってなんだ?」というお客様も多いと思うので、製品を通じてこれからの日本を発展させていくIoTに触れていただければなと思い、お客様が一番通るラウンジに設置しています。
展示製品の一部には、以下のようなものがあります。
多くの交流が生まれるラウンジでは、IoTデバイスに触れた方の声を集めるアンケートシステムを導入しています。体験を通じて得られた率直な意見を集め、メーカーと共有し、これらの意見を取り入れ、サービスの向上を図りたいと考えています。
他にも、ラウンジには「アトモフウィンドゥ」というIoT製品が壁にかかっており、そこからは美しいコバルトブルーの海と、波の音が広がっていました。「閉鎖的な空間での使用に親和性が高い製品だ」と茶置氏は話していました。
IoTは今後も発展していくと思いますが追加予定はありますか?
IoTデバイスは色々なメーカーが出していて数多く存在します。導入してみたいデバイスは多くありますが、ゲストさんの体験がより良いものになるように、それを満足に実現できる商品を置いていこうと思っています。
IoTというと機器なので、スマートさと冷たい印象があると思いますが、あくまで宿泊施設なので、体験のデザインに関しては、ホステルが持つアットホームさを大切にしています。どこまでいっても宿泊施設なので、心から安らげる空間になるように・・・。
and factoryとして考える&AND HOSTELの今後について
今後の展望について教えてください。
今後の展望としては、IoTの暮らしを実現させる中長期目標があります。2018年中に全10店舗になるんですが、それぞれのホステルにIoTを体験できるスペースや部屋を入れて、よりIoTが身近で、便利なものだということをお客様に伝えたいです。そして、メーカーへのフィードバックをすることで、日本のIoT市場の発展に貢献できればと思っています。
最後に・・・「&AND HOSTEL」の「&」はどんな意味があるんですか?
「&」には、“繋がる”という意味が込められています。もともと、スマートフォンアイディアカンパニーという企業コンセプトがあったんですが、冒頭にもお話した通り弊社は“IT×不動産”を体現しています。IoTというまだ知らない未知の技術を人へ繋げ、ホステルに来るゲスト同士の繋がりを大切にできたらなと。より良い日本のIoT事業を多くの人に伝えられたら本望です。
2018年の1月に秋葉原に1店舗オープン予定の「&AND HOSTEL」。今後の展開に乞うご期待!
>>インタビュー第2話を見る「株式会社PLAY & co 中島氏」
(HOTELIER編集部)