【パレスホテル】サステナビリティ推進の取り組み、「エコマークアワード2021」優秀賞を受賞

人を育て、自然・社会と共生する。「未来を、もてなす。」ホテルの進化

小泉 亜沙美(写真左)株式会社パレスホテル ブランド戦略室 ブランド戦略課 支配人
柳原 芙美(写真右)株式会社パレスホテル ブランド戦略室 室長

ホテル業界でいち早く生ごみの肥料化を進めるなど、自然や地域社会との共生に注力してきたパレスホテル東京。新たに掲げたサステナビリティコンセプト「未来を、もてなす。」のもと、社内浸透を強化し、全社を巻き込んだ取り組みで、2021年には「エコマークアワード2021」を受賞しています。同社のサステナビリティ推進をリードするブランド戦略室のお二人に話を伺いました。

皇居外苑に隣接した自然豊かな丸の内で歩み続けたホテルとして

―パレスホテルでは、CSRの考え方が一般に広がる以前の1990年代からさまざまな社会・環境活動を続けられています。その背景について教えてください。

柳原:パレスホテルはもともと丸の内の豊かな自然の中に誕生し、半世紀以上にわたって事業を営んできました。私は1990年代に入社しましたが、都心ながらに秋になるとトンボを見かけたり、冬にはお濠に薄く氷が張ったりと、通勤中にも四季の移ろいを肌に感じたのをよく覚えています。そうした環境の中、自然との共生を考える姿勢が、ホテルの根底に当たり前に育ってきたのだと思います。2012年には「パレスホテル東京」として生まれ変わりましたが、そのときお客様への約束に掲げた5つの提供価値でも、1つ目が「自然との調和」となっています。

小泉:社会・環境をめぐる取り組みの歴史を振り返ると、1985年に自衛消防隊を結成したのを皮切りに、1992年には週1回の地域でのごみ拾い活動なども始めています。また、その頃にスタートしたのが「エコパレス」の名前で今日まで続けている生ごみの有機肥料化です。リサイクルした生ごみ肥料を特定の農家で使っていただき、その農作物を再びホテルで利用するという循環型のシステムをつくったのはホテル業界では私たちが初めてになります。

―今回、新たにサステナビリティコンセプト「未来を、もてなす。」を制定されました。

柳原:今後さらに取り組みを強化していくために「私たちは何を重視し、どこに取り組むべきか」という指針を持ちたいと考えたのがきっかけでした。SDGsへの貢献を考えても、17の目標が扱う分野はとても広く、パレスホテルとしての向き合い方が問われます。全スタッフが毎日の業務の中で持続可能性を考え、自分ごととして取り組んでいくため、軸となるのがこのサステナビリティコンセプトです。

小泉:ホテル業を営む当社らしさを「未来を、もてなす。」という言葉に表現し、その下には行動の指針として三本の柱を設定しました。まずは、お客様にも一緒に働く仲間にも思いやりを示す「人にやさしいおもてなし」。2つ目が、地域社会と共生していく「社会とつながるおもてなし」。そして最後が、緑と水に囲まれた皇居外苑のほとりで運営するホテルとしての「自然と生きるおもてなし」となっています。

「エコマークアワード2021」優秀賞を受賞

―2021年にはエコマーク認定「ホテル・旅館Version2」を取得し、「エコマークアワード2021」で優秀賞を受賞されていますね。

柳原:これまで粛々と続けてきた取り組みをあらためて振り返り、客観的な評価を得るために取得したのがエコマーク認定でした。「e」を模したエコマークは日本ではなじみ深く、スタッフが意識を合わせていくのにふさわしいベンチマークになります。取り組みの歴史が長く多方面に広がるだけに、認証取得に向けた社内の情報の取りまとめは大変でした。けれど、そうした「早い時期から幅広い活動を続けてきたこと」自体を評価いただき、今回のにつながりました。

従業員食堂の入り口に掲示された、エコマーク認定証

小泉:ちょうどサステナビリティコンセプトを制定し、社内浸透に動き始めていたタイミングでの受賞でした。「学び理解する」ことを重視した姿勢は、注目いただいたポイントのひとつだったかもしれません。人と人がつながるホテルという場所で、スタッフがきちんと取り組みを理解して、正しい知識のもとお客様に接することは極めて大切と考えています。

柳原:SDGsのポスター掲示や、イントラネットの「サステナビリティ連絡会」専用ページでの情報発信を通して、スタッフへの浸透はかなり進んできた気がします。普段の会話の中で自然にSDGsが話題に上ったり、先日も私たちが知らないうちにラウンジバーでサステナブルシロップの提供が始まっており、現場主導の動きが広まっています。

小泉:従業員食堂で始めた「ミートフリーマンデー」もパレスホテル東京らしい取り組みといえますね。月に1度、動物性フリーの食事を皆でとることで、肉食が環境にかける負荷を考えるきっかけとしています。ちょうど同じ時期にホテル内のオールデイダイニング「グランド キッチン」でもプラントベースのハンバーガーの提供を始めていて、お客様に召し上がっていただくものを自分たちでも試すという意味もあります。

バックヤードでのSDGsポスター掲出の様子

オールデイダイニング「グランド キッチン」で提供されているプラントベースバーガー

お客様の満足をつくる、ロスフード活用の商品

―フードロス対策の一環として、規格外の野菜を使ったケークサレの販売を開始されています。

柳原:フードロス対策はこれまでにも注力していて、生ごみ肥料「エコパレス」で育てた農作物を従業員食堂で提供したり、人気ショートケーキの切れ端をロールケーキに生まれ変わらせた商品「端っこロール」を販売したりなど、先行する取り組みがあります。今回のケークサレは、食料廃棄問題に取り組むFOOD LOSS BANKさんと協業した初めての試みです。同社からご紹介いただいた農家から、規格外というだけで廃棄されてしまう野菜を仕入れてたっぷり使用し、具沢山に仕上げています。

小泉:甘くないケークサレはお惣菜感覚で楽しめるケーキで、手軽な朝食にもお酒のお供にもぴったりです。お客様に提供する上では、ロスフードを使用していてもおいしさにご満足いただくことが前提になります。そこには一切妥協せずシェフたちが工夫を凝らしました。

柳原:ロスフードは「この野菜をこの期間にこれだけ仕入れ可能」とはいかず、安定供給が見込めないのが一番難しい点ですね。そのため今回のケークサレでは、中に入っている野菜がその時々で異なります。材料が変わっても、おいしいものをしっかりと提供していくために何が良いかを試行錯誤して、たどり着いたのがケークサレでした。お客様には好評をいただいていて、すぐに売り切れる人気商品となっています。

小泉:2021年11月からは第2弾として、廃棄される予定だった苺を使ったパルフェグラッセをロビーラウンジで提供しています。冷凍の苺を使うため、こちらの方が仕入れの安定性は高く、ロスフード活用は少しずつハードルをクリアしてきていると感じます。また、そもそもロスを出さないことも重視していて、2019年に開業したフランス料理「エステール」はその代表例です。専属契約した農家から有機栽培の野菜を仕入れたり、皮や芯まで使える方法で調理したり、ほとんど食材の無駄を出していません。また、フードロス以外のサステナブルな取り組みとして、安心安全な地産地消の食体験を提供するため、専属契約した農家から有機栽培の野菜を仕入れています。

規格外の野菜を使用したケークサレ

苺のパルフェグラッセ

「エコパレス」を未来型の電気エネルギーに

―2021年の冬には生ごみ肥料「エコパレス」を介して集めた電気をクリスマスツリーの電飾に使うという、非常にユニークな挑戦をされていますね。

小泉:はい。デザイン・テクノロジーの研究開発を行うtripod designさんが持つ、「超小集電」の特許技術を初めて商用環境で利用したものになります。超小集電はあらゆる自然物を媒介に小さな電力を集める技術で、今回電飾の電源となったのは「エコパレス」を混ぜた土です。土に電極を刺して電気を集めるというのは、私たちも最初は本当に驚きました。「エコパレス」に含まれる微生物の働きが電流を通しやすくし、電解物質に適した土の状態を保ってくれます。

柳原:「エコパレス」が電気エネルギーになるとは全く想像しなかったですね。tripod designさんは、2020年に超小集電のプレスカンファレンスを当ホテルで開催されており、そのときからのご縁が今回のコラボレーションにつながりました。私たちが長く育ててきた「エコパレス」の循環型リサイクルシステムと、tripod designさんの自然を介して電気を集める技術は親和性が高く、サステナビリティをめぐるお互いへの共感が協業の背景にはあります。

小泉:新しい技術だけに、プロジェクトが始まった当初は「商用に使うには、十分な電気の量を得られない」という課題もありました。しかし、研究チームの皆さんは実験を重ねてめまぐるしいスピードで技術改良をされて、最終的なご提案をいただいたのが2021年10月のこと。2500灯以上の電飾を「エコパレス」を混ぜた土だけで24時間・1カ月以上にわたって点灯させ、ロビーのメインツリーを飾るという、お互いにとって大きなチャレンジでした。

柳原:透明のケースに詰まった土に電極を刺している様子はお客様にもご覧いただけるようにしたところ、たくさんの方が足を止めて説明パネルを読んだりスタッフに質問するなど、強い興味を示してくださいました。「自然との調和」を大切にするパレスホテル東京ならではの、循環型のクリスマスを楽しんでいただけたなら嬉しいです。

2021年のクリスマスシーズンのメインツリー

透明のケースに入ったエコパレスに刺さっている電極から電力を集めている

さまざまな共創のもと広がる、未来への可能性

―ベニューとして、サステナビリティへの取り組みは事業にどのように影響すると考えますか?

柳原:近年、海外のお客様を中心に「環境に配慮したホテル運営」が宿泊契約の新たな基準のひとつになってきていて、今後はMICEの会場選択でもそうした傾向が強まってくるのでしょう。当社としては、主催者様の方針に沿ったサービスを提供できるよう、選択肢を用意しておくことが大切なのだと考えています。例えば、ペットボトルでのお水の提供を避けたいというニーズをいただいた際、どのような提案ができるか。そのためには私たち自身が正しい知識を身につけていくことが欠かせません。

小泉:最近では、さまざまな組織・団体がサステナビリティやSDGsをめぐる活動を活発化させています。先日、当ホテルで開催された日本政府主催の大型国際会議※もその一例といえ、世界のリーダーが健康・食・繁栄をテーマに議論を深めていくのを私たち運営スタッフも身近に目にしました。選ばれ続けるホテルであるために、私たちもまた社会と同じレベルで意識を高め、「未来を、もてなす。」の実現に尽くしていくことが重要なのだと思います。
※2021年12月に開催された「東京栄養サミット」

―今後に向けて強化していきたいことがあればお聞かせください。

小泉:いろいろな方向性が考えられますが、客室のアメニティから使い捨てプラスチックを減らすというのは現在取り組んでいることのひとつです。客室はホテルの顔であり、アメニティを楽しみにされている方も多い中、お客様の満足を犠牲にしないのが大原則です。プラスチックから木の製品に変える、包装をシンプルにするなど、多くの方に受け入れていただきやすい形を検討しています。

柳原:丸の内エリアは、海外からのお客様に「都心の真ん中にこんな場所があるなんて」と驚かれるほど緑豊かな環境で、そうした魅力を十分に発信できればMICEなどの誘致にもつながるのでしょう。私たち単体ではできることに限りがあっても、想いを共有する他社との協力により、さまざまな可能性が広がると思います。FOOD LOSS BANKさんやtripod designさんとのプロジェクトに続き、良い共創事例を増やしていきたいですね。

【参考記事】
https://tokyo-marunouchi.jp/ja/sustainability/2572?utm_source=email&utm_medium=email&utm_campaign=directcontact07


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