東京都が宿泊施設向けに容積率緩和基準を改定、「最大500%上乗せ」の背景とは

東京都が先行して容積率の緩和基準を改定、今後は他の自治体でも改定が進む

東京都は、2016年6月に「宿泊施設の整備促進に向けた都市開発諸制度活用方針等の改定」を公表し、即日施行された。これは2003年6月に策定された「新しい都市づくりのための都市開発諸制度活用方針」などを見直したものである。このほかに「東京都特定街区運用基準」「東京都高度利用地区指定方針及び指定基準」「東京都再開発等促進区を定める地区計画運用基準」が同時に改定されている。

公開空地の確保などを伴う建築計画に対して容積率などを緩和する制度の総称を「都市開発諸制度」といい、今回の改定によって、ホテルや旅館など宿泊施設の容積率を最大で500%まで上乗せすることが可能となった。

東京都では「最大500%上乗せ」のタイプを加えてホテルの建設促進を図る

国土交通省が「通知」の中で示していた例では、「指定容積率の1.5倍以下、かつ300%を上限」に容積率を緩和することとしているが、東京都ではさらに踏み込んだ内容で基準を策定した。「都心等拠点地区」は300%、「一般拠点地区」は250%、「複合市街地ゾーン」は200%の緩和幅(宿泊施設の床面積に相当する容積率に限る)を定める「タイプ1」と、さらに上乗せが可能となる「タイプ2」だ。

「タイプ2」では、ホテルなど「宿泊施設による緩和」は300%が限度となるものの、公開空地を設けたり緑化をしたり、あるいは子育て支援施設や福祉施設などの設置による優遇措置を組み合わせたりすることで100%〜200%が上乗せされ、最大で500%の容積率緩和が可能となる。

賃貸マンションや社宅のリノベーションによる、ホテルへの用途変更も進む!?

容積率が大幅に緩和されるからといって、大型のホテルが急に増えるわけではない。2020年の東京五輪には間に合わない場合も多く、それよりも主に想定されているのは比較的小規模なホテル・旅館の新設や増改築、あるいは既存建物の用途変更による宿泊施設としての活用だろう。

国土交通省による「通知」では、大型の宿泊施設を「どん」と造るよりも、小さなものでも早急に「どんどん」と積み上げていって欲しいという印象だ。

客室数の確保に関しては「民泊」の活用も推し進められようとしているが、現状では違反状態のものも多く、またその実態も不透明な面が強い。だが、急増する宿泊需要に対しては、ホテル・旅館と民泊のどちらも増やさなければならなく、ホテルなどに対する容積率の緩和制度が民泊の整備を否定するものでもない。

容積率の300%(最大500%)の緩和は、それなりに大きなものであり、圧迫感のある高い建物が増えることを心配する人がいるかもしれないが、マンションではすでにかなりの緩和措置がとられている。よって、今回の宿泊施設向けの緩和が街並み形成に及ぼす影響は小さいだろう。それよりも訪日外国人が現在の2倍、3倍に増えたときの街の変化のほうが大きいはずだ。

【参照記事】
東京都が宿泊施設向けに容積率緩和基準を改定、「最大500%上乗せ」の背景とは?

(HOTELS.Biz 編集部)


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