爆買いは日本の医療サービスへ。続伸する医療ツーリズムで中国人が求めるものとは?
2016年1月~6月の訪日中国人の数は前年対比41.2%増の3,076,600人。しかし消費の傾向はかつての「爆買い」から変化を見せている。
免税店や家電量販店で大量に「商品」を買っていた中国人は減少し、日本でしかできない「体験」に消費行動は移っている。
中国人の健康を脅かす三大成人病
「日本の医療サービス」への熱視線は引き続き高まりを見せている。
背景としては、中国で癌、心臓脳血管病、糖尿病の三大成人病での死亡者数が増加、低年齢化していることだ。特に癌は中国人の死因第1位。中国では「早期発見、早期治療」ができる良好な意識や、技術、精密な検査機器が不足しており、中国人の癌患者の生存率はわずか13%に対して、日本は68%である。
求めるのは「早期発見、早期治療」のための高精度な精密検査
Ofweek(中国Ofweek医療情報ネット)によると、医療ツーリズムにより受ける医療サービスは、アメリカで癌の治療、イギリスで肝臓移植手術、日本では精密検査を受けるのが最も多い。
日本の医療技術は、完治率と信頼度などの面から、高い優位性を持っていると考えられている。特に、早期腫瘍、脳、心臓血管、内分泌、消化道などの検査項目において日本の検査は高く評価されている。最新の超音波画像診断装置などによる血糖値、内臓脂肪量などの計測により、早期に動脈硬化や代謝の異常を発見することができ、さらに生活習慣について具体的な指導もしてくれる。統計によると、日本に行って早期癌検査を受ける中国人では、9%の人は早期癌で、90%越えの人は、高血圧、高脂質、高血糖などの重大疾病を持っているリスクが高いと診断されたとのデータがある。日本政策投資銀行のレポートによると、2020年までに健康検査という項目だけでも、中国旅行客の来日人数は延べ31万人を超えるとのこと。医療旅行の潜在マーケットの規模は5507億円(約297億元)になる。
医療現場でも評価が高いのは日本の「おもてなし」
日本の医療サービスを受けた中国人から、日本の医療サービス全体に対する印象を聞くと「日本の医療サービスは、丁寧で、暖かく、緻密で忘れられない。」という。
例えば、
●医師や看護師みんな笑顔で、態度も良い。検査の前は「宜しくお願いします」といい、検査後は「お疲れ様でした!ご協力を有難うございました!」と言われる。第2の故郷に戻ったようで、検査中の緊張感を大幅に改善することができた。
●細部までサービスのカバーができている。例えば、超音波検査を受けるとき、体に塗られる液体を予め、人間の体温と同様な温度まで温めておく。そして、暖かいタオルが用意され、検査が終わった後、医師自ら体を拭いてくれる。とても、感動的である。
●病院は清潔で、全てが秩序的である。病院に特有の薬の匂いさえなくて、とても安心する。
などのフィードバックがある。
医療の現場でも日本の「おもてなし」に感動する中国人は多い。先進的な医療技術や設備とともに、ホスピタリティーへの評価が高いことが日本の医療サービスの強みである。
医療のインバウンド需要と日本の高齢化
医療サービス領域でもインバウンド消費は今後の日本の景気を支える重要な柱であるが、一方で超高齢化が進む日本の医療現場では、現在でも医師不足、医療従事者不足が問題化している。今後多くの医療を目的とした外国人ツーリストを受け入れ、多くの消費を呼び込むためにはさらなる受け入れ態勢の強化が必要となってくる。