レ・コネクション、京町家をリノベーションした『紡~tsumugi~』ブランドを新たに3棟開業

京都エリアの収益用物件売買や運営管理を行なう株式会社レ・コネクションは2019年9月5日、『紡~tsumugi~』ブランドの宿泊施設を京都市内に新たに3棟開業することを発表した。

同社は2016年4月の設立以来「人を結び 街を紡ぐ」をコンセプトに、京町家を宿泊施設へと再生する取り組みを積極的に行なっている。2019年3月にも同ブランドの宿泊施設を2棟開業しており、現在市内で管理運営する施設は35棟に上る。

京都市の「京町家まちづくり調査」によると、現在、約4万8,000戸あると言われる京町家のうち約5,000戸が空き家状態だ。京町家は100年以上の歴史を持つ建物が多く、取り壊してしまうと二度と復元することができない。また、人の手が入らず放置されたままの建物は安全上や防犯の上で悪いばかりでなく、整備されていない街並みは都市のブランド価値を下げることにも繋がる。

同社は空き家の中でも、特に「京町家」と呼ばれる昭和25年以前に伝統工法により建築された木造建築を主に、その趣をできるだけ活かすリノベーションを行っている。また「泊まる」ことそのものを特別な体験としてもらうため、主に一日一組限定の一棟貸し宿作りを行ない、外観や内観にも京都を感じられる意匠にこだわっている。同社は「運営する施設は今期50棟まで拡大することを目標としており、京町家の保存再生を通して京都の街の活性化に貢献したいと考えています」と述べている。

加えて、簡易宿所と地域住民との関係性が昨今問題となっている中、同社は地域との友好的な関係を築き町に根差した企業活動をしていきたいという思いから、宿泊施設を利用したワークショップやイベントを開催している。イベントの実施により、通常近隣の宿泊施設を利用することのない地元住民に施設を知ってもらい、その良さを感じてもらいたいと考えている。

今回、新たに開業を発表したのは「紡 河原町二条」「紡 七条堀川」「紡 京都駅南」の3棟だ。

「紡 河原町二条」は2019年8月17日に開業した。京都市営地下鉄東西線「京都市役所前」駅から徒歩5分でアクセスでき、古都の歴史を支えてきた「京都市役所」すぐそばの北側に位置する。施設周辺の寺町通や夷川通は、京都らしさを感じる骨董屋・画廊・家具屋が立ち並び観光や散策に最適だ。三条商店街や新京極商店街などの地元民が楽しむエリアも徒歩圏内にある。最大5名が宿泊可能だ。

「紡 七条堀川」は2019年9月14日に開業する。京阪「清水五条」駅から徒歩約10分に位置し、700年以上の歴史ある世界遺産「西本願寺」すぐそばの、昭和25年以前に建てられた伝統的な京町家をリフォームした一棟貸宿泊施設だ。「西本願寺」には浄土真宗の開祖・親鸞聖人の木像がある御影堂や書院、北能舞台などの国宝が多くあり、京都駅からほど近い場所で古都の歴史を堪能できる。また、京都水族館や京都鉄道博物館へは徒歩5分のため、子連れでの観光にも利便性の高い立地だ。最大5名が宿泊可能だ。

「紡 京都駅南」は2019年9月22日に開業する。JR「京都」駅から徒歩約5分でアクセスでき、静かな住宅街の片隅に佇む。木のぬくもりを感じる奥庭を望む寝室は、暖かみのある間接照明を使った高級感ある造りとなっている。最大2名が宿泊可能で、平屋でコンパクトでありながら充実の設備を備え、カップルや夫婦での旅行に最適だという。

3棟のうち「紡 七条堀川」と「紡 京都駅南」は、所有者の高齢化に伴い空き家となっていた物件を改装したもので、「紡 河原町二条」は新築に伴う良好な景観維持での課題があった。施工する際のポイントとして、それぞれの地域に合った居住環境の維持や向上に配慮した宿泊施設の提案をしたという。また、お披露目会として京都の学生による落語の会や子育てワークショップなどのイベントを開催し、近隣住民との交流の場を実施した。今後も地蔵盆などの地域行事にも参加するなど、地域に密着した活動を続けていく考えだ。

同社は2019年4月、株式会社クラウドリアルティと共同で、クラウドファンディングによる築100年以上の京町家を宿泊施設として再生するプロジェクトを始動した。空き家の再生などの事業に個人が出資する場合、既存の金融機関からは融資を受けにくいという。そうした中、新たな資金調達手法として民間のクラウドファンディングを使ったプロジェクトは、行政からも期待されている取り組みだという。

2019年6月には、京阪電鉄不動産株式会社と「京町家再生事業に関する包括協定」を締結した。京阪電鉄不動産は中期経営計画(2018~2020年度)において不動産業の事業ラインナップ強化を掲げており、京町家リノベーション事業に取り組むため京町家再生事業の実績を持つ同社と共同事業協定を締結した。今後両社で年間10棟の京町家をリノベーションすることを目指すという。

京都市では京町家に関する条例を制定するなどし、地域全体で京町家の保全・継承に取り組んでいる。また、レ・コネクションをはじめ多くの事業者が京町家を再生した宿泊施設を開業している。そうした宿泊施設は、年々増加する宿泊客を受け入れられる環境を作ることに加え、「歴史ある京町家に宿泊できる」という体験も提供できる。空き家の増加を食い止め貴重な物件を残していく取り組みが、今後も一歩一歩着実に進んでいくことを期待したい。

■「紡~tsumugi~」公式サイトはこちら

【参照記事】
・約5千戸が空き家状態 所有者の高齢化・維持管理・地域住民との関係性が課題 京都のアイデンティティーを守る 街並み再生に貢献 京都市内に 一棟貸し宿泊施設を3棟オープン
・不動産特化型クラウドファンディング 4月24日より募集開始 京町家を宿泊施設に再生する新たな資金調達 クラウドリアルティ社との共同イベント 4月15日に東京・京都で開催
・京阪電鉄不動産と京町家再生事業に関する包括協定を締結 歴史文化を次世代に受け継ぎ、地域貢献を加速

(HOTELIER 編集部)


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