日本茶がコンセプトの1日1組限定貸切宿「茶心」がオープン、訪日外国人に異文化体験を提供

一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(以下:こゆ財団)が、宮崎県・新富町の主要な農産物のひとつである「日本茶」をコンセプトとした、エグゼクティブ向け宿泊施設をプロデュースした。特別な体験を求める訪日観光客に向けた体験型ゲストハウス『茶心』として、2019年5月1日より予約受付を開始している。

こゆ財団は、2017年4月に宮崎県児湯郡新富町が旧観光協会を法人化して設立した地域商社だ。「世界一チャレンジしやすいまち」というビジョンのもと、“1粒1,000円のライチ”に代表される農産物のブランディングを通じて特産品販売を行い、得られた利益で人財育成に投資している。2018年11月には内閣府・内閣官房から地方創生の優良事例に選出され、首相官邸で事例発表を行った。

『茶心』は「稼げる産業」である観光産業において新富町の国際競争力を高め、訪日観光客を対象とするビジネスで、地域に経済を生み出すための取り組みのひとつだ。国内外の品評会で高い評価を受け、3年連続で農林水産大臣賞受賞実績のある日本茶専門店「新緑園(しんりょくえん)」と連携し、茶鑑定士による利き茶・お茶入れ(宿泊者のみの予約制)などを加えた至高のサービスを提供する。「新緑園」の代表で、全国に十数名しかいない茶鑑定士9段の黒木信吾氏は、同施設の母体となる住宅「黒木邸」の元家主の甥にあたる人物だ。

観光庁によると、2017年の訪日外国人旅行者数は2,869万人(対前年比19.3%)、訪日外国人の旅行消費額も4兆4,162億円(前年比17.8%増)と増加傾向にある。その一方で、豊富な地域資源を有しながらも、新富町では若者の流出や高齢化により地域経済が衰退している。農村地域では、空き家の増加が深刻な地域課題になりつつあるという。「黒木邸」も、大きな家屋と庭園を有する貴重な地域資源でありながら空き家となっていた。

地域活性化に対し精力的に取り組んでいた黒木氏は「もし地域を盛り上げる場所になるならば、この家を喜んでお貸ししたい」と、こゆ財団に提案したという。そして、農村部に新たな経済と関係人口の創出を目的に、こゆ財団が借り受けリノベーションを計画した。施設の運営は株式会社SAMURAIが行う。SAMURAIの代表取締役であり、秋田県からの移住者でもある高橋慶彦氏とこゆ財団は、訪日外国人向けのエグゼクティブサービスを開発した。

『茶心』は、眼前に茶畑が広がる1日1組限定の貸切宿で、宮崎市内から車で約30分の新富町新田地区に位置する。新富町は、温暖な気候と豊かな自然に恵まれた地域だ。海岸線はアカウミガメの産卵地にもなっているといい、夏には産卵や、生まれたばかりのウミガメの放流を見ることができるという。

“茶心”というネーミングには、「今までに無い“お茶の心を体験する宿”を実現する」という想いが込められている。千利休が掲げた「和敬清寂(わけいせいじゃく)」を理念に、「互いが和らいだ心で接し、敬い、清らかに向き合える時間」をゲストに提供するという。

ゲストを最初に迎える暖簾は、千利休が好んだと伝える緑みの茶色“利休”で本染めした。玄関から縁側に繋がる廊下の壁は、千利休作の茶室を再現したものを参考に色を選定したという。また「黒木邸」の特徴であった24畳の和室をそのまま活かし、お茶体験や団体客の寝室として活用できるようにしている。

施設にはキッチン・ダイニング・リビング・大広間・寝室に加え、縁側やテラス、庭園もある。職人が丁寧に剪定した美しい庭園は、縁側やテラスでお茶を飲みながら自然の美しさや四季の変化を愉しめる。1名~10名まで宿泊でき、セミダブルベッド2台と布団10組を用意した。冷蔵庫・炊飯器・調理器具・ケトル・食器など、長期滞在に便利な設備も整っている。また、施設で無料で提供するお茶はすべて「新緑園」のお茶で、急須で入れるお茶と、冷蔵庫に水出し茶を用意している。リラックスしながらゆっくり過ごせるよう、宿内には茶香を焚いている。

夕食は地元で提携する古民家料理店へ送迎する。多彩な農産物に恵まれた農業の町・新富町の、ふるさと納税で好評を得ている旬の野菜や、地元でしかほとんど流通していないローカルブランド牛などをバーベキューで味わうこともできる(宿泊者のみの予約制)。朝食には、新富町のお米を使った茶粥と漬物のセットを提供する。このほか、シェフ出張料理サービスや、食事・お弁当のデリバリーを企画・準備中だ。

こゆ財団は施設の今後について、「新富町の地域資源を組み合わせた、新富町ならではのスペシャルアクティビティを提供。地域住民の皆さんも参画し、“和敬清寂”を体感できる唯一無二の“TEA HOTEL”に世界中から人が集まるよう、体験コンテンツを企画・実行していきます」と述べている。スペシャルアクティビティは「国産1%しか流通していない1粒1,000円ライチの摘みとり」「全長8キロ。天然の海岸線を馬で駆ける外乗り」「日本遺産 新田原古墳群で古代と通じるマインドフルネス」などを計画・実行していくという。

利き茶やお茶入れなど珍しい体験だけでなく、ブランド牛やライチなど新富町ならではの食も楽しめる『茶心』。貸切宿のためプライベートな時間を過ごすことができ、家族や友人など大人数でも充実した滞在ができそうだ。国内外からゲストが訪れ、新富町全体を盛り上げる施設になっていくことを期待したい。

■「茶心」公式サイトはこちら

【参照記事】
コンセプトは日本茶。異文化体験で地域観光の国際競争力を向上

(HOTELIER 編集部)


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