FITを活用し宿泊施設の運営コストを削減、TRENDEが提案する太陽光電気を利用した『ほっとでんき』

宿泊施設を運営するにあたり、運営側は少しでも光熱費や人件費など毎月掛かるコストは抑えたいもの。またオーナーや投資家は、もし売上が減ってしまった場合、少しでも手残りがほしいというのが本音だろう。

今回HOTELIER編集部がインタビューをしたのは、電力の小売事業を展開する、東京電力グループのTRENDE(トレンディ)株式会社。運営における毎月のランニングコストを抑える方法の一つとして、同社のモデルが宿泊施設運営と高いシナジー効果を生み出すと考え、代表取締役の妹尾 賢俊氏および事業開発マネージャーの佐藤 雄二氏に、事業やサービス内容についてお話を伺った。

東京電力グループのベンチャー企業「TRENDE」とは

御社について詳しく教えてください

当社は2017年8月に設立したばかりの企業です。最近は太陽光発電設備などが値下がり、将来的に蓄電池の値下がりやEVの普及が進み、各家庭で電気を「発電」「蓄電」「自家消費」「余ったら売る」のようなライフスタイルが増えていくと考えています。

そこでグループとしても、仮にこれまでのように大きい発電所から送配電ネットワークを通じて、ご家庭や工場などにお届けするという「一方通行」のものだけじゃなく、エンドツーエンドで電気をやりとりするモデルに対応していくため当社が設立されました。

現在は、一般家庭向けにお得な料金プランを提案する『あしたでんき』や、太陽光のPPA(電力販売契約)モデルを推進する『ほっとでんき』、蓄電システム向けの電力提供サービス『あいでんき』の3つの事業を展開しています。

会社としては、太陽光パネルを持っている家が、太陽光パネルを持っていない隣の家に直接電気の売り買いができるような仕組みづくりを目指しています。これにより、電気を売る方は売電収入を得られる手段を得られ、電気を買う側は、一般の電力会社から電気を買うよりも安い価格で直接買うことができます。私たちはこの仕組みを「P2Pの電力取引」と呼んでおり、それをインフラとして提供するというのが一時的なゴールとなります。

P2Pの電力取引をインフラとして提供することを掲げる、代表取締役:妹尾 賢俊氏

太陽光のPPAモデル『ほっとでんき』について

ほっとでんき』はどんなサービスなのですか

2018年8月よりスタートしたサービスで、簡単に言うと、お客様の自宅や建物の屋根をお借りして、当社が太陽光パネルを設置させていただくもの。屋根に設置した太陽光パネルで発電した電気は、お客様が自家消費としてお使いいただけ、雨の日や夜間など発電しない時は、通常の電線を通じて電気を供給します。

当社では、太陽光パネルで発電して消費した電力と、夜間など系統から提供させていただく電気の2つを足し、各エリアの標準的な料金で電気を供給させていただいています。そこから例えば東京電力エリアの場合は、東京電力エナジーパートナーが供給する従量料金から、10~20%オフした料金で請求をさせていただいています。割引率は契約期間により変わりますが、10年契約の場合は10%OFF、20年契約の場合は20%OFFと毎月電気料金がお安くなります。

また、太陽光パネルの代金や工事費用は全て当社で負担し、お客様が負担することはありません。契約期間満了後は太陽光パネル自体をお客様に無償で譲渡するため、その後は自家消費分でお金も掛からず自由にお使い頂けます。

つまり、契約期間中は電気料金がかなりお安くなり、契約期間満了後は太陽光パネルを自分のものとして、そこで発電した電気を自家消費していただけるサービスです。

通常の系統電力と太陽光パネルで発電した電力を利用でき、かつ料金が割引になる『ほっとでんき』

太陽光パネルはどんな建物でも設置できますか

対象となるのは「低圧」と呼ばれる契約容量が50kW未満の一般のご家庭で、太陽光パネルを置く“屋根”をお借りして設置させていただくので、一戸建てのご家庭、もしくは中小法人や幼稚園・保育園、民泊を営まれている方など、太陽光パネルを屋根に設置できる建物を所有する方ですね。

一方、大型ホテルやマンションなど、キュービクルという高圧電線から直に電気を引いているところは対象外となります。つまり、建物のカタチではなく、電気の低圧・高圧の違いで設置できるかが決まります

そもそも、なぜ無料で設置できるのですか

無料で設置できるのは、FIT制度(固定価格買取制度)により売電収入を得ているからです。

例えば、お客様の屋根の上で発電した電気を100とします。このうちご家庭で40を使うと60の電気が余りますよね。当社はその余った電気をFIT制度で送配電事業者(電力会社)に売ることができます。

こうしてお客様との契約期間中に売電収入で設備費用などを回収していく。つまり電気の割引をさせていただく原資は、売電収入でカバーしていくというモデルなので、設備を無料で設置して電気料金を安く抑えることが可能になるのです。正直不安ですよね、無料で設置できたうえに電気料金も安くなるのですから(笑)。

発電した電気はそんなに余るのですか

統計的に100発電したうち、100全てを使い切るケースはほとんどありませんね。もちろんご家庭によって異なりますが、押しなべて3~4割程度といったところです。そのため残りを当社が売電し収入を得ることができれば、このモデルは十分に経済性が成り立つと試算しています。

また当社のモデルの特徴として、電気料金はお安くなるのですが、太陽光で使っていただいた部分のお金はいただいているカタチです。電力会社に売電する以外でも使っていただいた部分でのお金はいただくので、その意味でもリスクは減らせているのかなと考えています。

売電収入を得ることで設備費用を回収しリスクを減らすと語る、事業開発マネージャー:佐藤 雄二氏

個人で太陽光パネルを設置する場合、いくらくらい掛かるのですか

太陽光パネルで4kWのものを設置する場合、100万円くらいかかるかと思います。平均的に25~30万円/1kWはしますし、設置後のメンテナンスも自身でやらなければなりません

でも当社なら、太陽光パネル自体に約20年の製品保証がついていますし、もし仮に契約途中で落雷や雹などで太陽光パネルが故障した場合でも、当社で無償交換をさせていただきます。さらに付属設備も契約期間中であれば無償交換しますし、お客様側でご負担いただくものは何もないので、安心して始められるかと思います。

宿泊施設への設置について

現段階で宿泊施設に設置しているケースはありますか

今はまだありませんが、シェアハウスを運営されている方につけているケースはあります。シェアハウスはずっとエアコンをつけている事が多いので、電気料金が高くなってしまいます。光熱費等は投資と考えた場合、利回りや運営費用への影響が大きいと思うので、電気料金が安くなることは大きなメリットなのだと思います。

認知度としてPPAなど第三者保有モデルはまだまだ低いですが、本当にメリットを感じられるサービスだと思うので、より多くの方に知っていただきたいと考えています。実際に電気料金がかなり変わりますし、設置前と比べた時にビックリされると思いますよ。

太陽光パネルを設置するまでの時間を教えてください

設置の大まかな流れですと、まずはお申込みを頂いて、そのときに図面をお借りしてこちらで屋根の大きさ等々を確認させていただきます。そこでだいたい乗るキロワット数がわかったら、工事店さんに現地調査をお願いします。屋根の形とか種類、向きによってキロワット数が異なるので、現地調査後に設置の工事をして、そのあと電力会社の送電網と繋ぐ作業(系統連系)ののち、発電開始・電気の供給となります。

それと同時に、FIT売電を行うための事業申請をWEBで行い、それが完了してから電気の切り替えを行い契約がスタートとなります。この申請とFIT売電の申請は併せて2ヶ月半ほどかかるため、だいたいお申込みからサービスの開始までは、長く見積もって4ヶ月~4ヶ月半ほど

サービス開始までに時間が掛かるため、建設中やこれから施工に入る宿泊施設さんなど、図面があれば同時に進めることができるので、言っていただければ早め早めに対応ができますね。特に新築であれば、オープンから間もない段階でサービス開始ができるかと思います。

『ほっとでんき』の利用状況はすべてWEBで確認することが可能だ。1日単位で消費電力量が確認できるのは嬉しい。

万が一、契約中に建物に何かあった場合はどうなりますか

震災などの不可抗力で当社が何かを請求することはありませんので安心してください。ただ、オーナーチェンジなどのお客様の事由により中途解約するケースはあると思うので、そのときは解約金として一括で設備を買っていただくようになります。とはいえ、買取り金額も市場価格に比べて安いため、お客様にとってデメリットになることはないと思いますよ。

これからの『ほっとでんき』について

今後サービスエリアは広げていくのでしょうか

現在は東名阪(東京電力パワーグリット管内と中部・関西電力のエリア)でサービスを展開しておりますが、今後は太陽光発電が盛んな九州エリアでのサービス拡大を予定しています。実際に九州エリアの多くのお客様から引き合いもありますし、日射量が多いエリアですのでニーズがあると踏んでいます。おおよそサービス開始は今春を考えています。

どのくらい宿泊施設に設置していきたいですか

宿泊施設が世の中にどれくらいあるかわかりませんが、年間で3,000棟ほど設置できたらいいなと考えています

当社のサービスは資金負担がないなど、事業者様にとってデメリットはないですし、事業者様から多くのお声がかかれば、工務店さんや工事店さんを増やすことも可能なので、より多くの方に当社のサービスを知っていただき、取り入れていただけると嬉しいですね。

最後に

電気自由化やFIT制度、PPAによる第三者保有モデルの台頭など、近年電力をめぐる環境は目まぐるしく変化している。次々と新たな制度が生まれたことで私たちは、様々な電気事業者の中から自身で選択し電気を購入できるだけでなく、自身で発電あるいは売電が可能になるなど、日々の生活コストを少しずつ減らせるような時代へと変わっている。

同社との出会いをきっかけに、宿泊施設の運営代行会社であり、HOTELIERの運営も手がける株式会社オックスコンサルティングは、他社に先駆け、自社で運営する戸建て型の宿泊施設全てに『ほっとでんき』の太陽光パネルを設置することを決定した。まずは既存の宿泊施設である京町家の屋根に設置し、毎月の電気代金がどのように変化していくのかをモニタリングし、数ヶ月後にその結果をHOTELIER内に掲載していく予定だ。

太陽光パネルの設置により、どのような変化が生まれるのかが、とても楽しみである。

■『ほっとでんき』について詳しくはこちら
■『TRENDE』について詳しくはこちら

(HOTELIER編集部)


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