旅館業界「泊食分離」導入。長期滞在客対応、モデル地区指定へ
観光庁は16日、旅館業界に対して部屋料金と食事料金を別建てとする「泊食分離」の導入を促していく方針を明らかにした。長期滞在の外国人旅行者らのニーズに対応し、低迷している旅館の客室稼働率を上げる狙いがある。将来的にはモデル地区を指定し、宿泊客が利用する飲食店の誘致にも取り組む考えだ。
2016年の宿泊旅行統計調査によると、客室稼働率はシティホテルが78.7%、ビジネスホテルが74.4%であるのに対し、旅館は37.1%と低い。
現在、日本の旅館で主流である「1泊2食付き」は、日本の多彩な食文化を楽しみたい長期滞在の外国人や個人の旅行者には敬遠されがちで、稼働率低下の一因となっている。しかし、旅館は日本の伝統文化を体験できる上、景観の優れた場所に立地していることが多いため、潜在的な集客力は大きい。
日本政府観光局が16日発表した7月の訪日外国人数(推計値)は、前年同月比16.8%増の268万1,500人だった。夏休みに入り、アジアからの家族旅行などが増え、単月ベースでこれまで最も多かった4月の257万8,970人を上回っている。17年上半期の訪日外国人は前年同期比17.4%増の約1,376万人だった。格安航空会社(LCC)の増便などを背景に、中国や韓国をはじめアジアからの訪日客が大幅に増えた。観光庁によると、訪日客が宿泊や飲食、買い物などで使った旅行消費額が半期ベースで初めて2兆円を突破した。
財務省が8日発表した2017年上半期(1~6月)の国際収支速報で、訪日外国人旅行者の増加で伸びている「旅行収支」の黒字が半期ベースで過去最高の7,903億円となった。
旅行収支は、訪日外国人の日本での消費額から日本人の海外での消費額を差し引いたもの。比較可能な1996年以降、赤字が続いていたが、14年下半期(7~12月)に初めて半期ベースの黒字(215億円)を記録。15年に入り急拡大し、同年の黒字は年間で1兆902億円、16年は1兆3266億円と伸び続けている。
今後旅館業界の「泊食分離」導入により長期滞在と宿泊スタイルの多様化が進めば、旅行消費額の拡大にも繋がりそうだ。
【参照記事】
・旅館業界「泊食分離」導入を=長期滞在客対応、モデル地区指定へ-観光庁
・旅行収支、最大の黒字=訪日客増が寄与-上半期
・7月訪日客、268万人=単月最高-家族旅行が増加
(HOTELIER 編集部)