【ホテル経営者必読インタビュー】アパホテル代表 元谷外志雄氏が語る、コロナ禍でも揺るがないアパホテルの成り立ちやホテル経営における勝ちパターンとは?
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、国内観光客はもちろん、訪日外国人旅行者数が前年同月比99%減(日本政府観光局)を更新し続ける昨今。
宿泊施設を営む企業の倒産が相次ぐ中、新規開業を続けるアパホテル。
コロナ禍でも独自のスタイルで攻めの姿勢を貫く姿からは、ホテル業界を牽引する貫禄が伺える。
今回は、HOTELIERの運営会社である株式会社オックスコンサルティング代表取締役の原康雄がインタビュアーとなり、アパホテルの盤石な基本理念や経営について、アパグループ代表の元谷外志雄氏にお話を伺った。
「寡占化一番のり」 を目標に
HOTELIER原: コロナ禍において不安を抱えている経営者の方々も多いと思います。元谷代表は、今後の経営展開についてどのようにお考えですか。
元谷代表: 我が社は、ホテル業界における 「寡占化一番のり」 を目標に掲げ、どんどん数を増やすことを目指しています。寡占というのは、どこか一つの企業が20%のシェアを取るところから始まるという位置付けです。現在、我が社においても、全体のホテル宿泊需要において8~9%だと思いますね。現在まだ10%に行ってないんです。
我々の戦略としては、まんべんなく全国に一律に作るということではないんですね。需要の少ない地方の県庁所在地の駅前なんかに出したら、うちには多くのお客さんが来てくれてありがたいけど、既存のホテルさんにご迷惑おかけするので、そういうことは避けようと。
地方都市で人口50~60万規模の都市だとそういうことになっちゃうからね。いわゆる需要が旺盛なところに進出することによって、他の同業のホテル需要を奪わないようにと考えています。
例えば東京ですとね、地下鉄の駅がかなりありますね。うちの棟数はまだ全然追いつかない。地下鉄の駅一つひとつに作ってもいいんじゃないかと考えると、まだまだ成長の余地はあるんですよ。
原: 他のホテルの需要を奪わないようにという点ですが、私も、こういう事業をしていますと、ついついマーケットを取っていくというような考え方をしてしまうもので…。
元谷: うちはそういうんじゃないんですよ。
お客様は満足を買う
元谷: 今、うちはだんだん大型化、高層化しつつありましてね、大阪あたりですと、37階建てで1700~2000室あたりの展開をしていこうと。「新都市型ホテル」 という新しいジャンルを考えています。
ホテルは、よく、ビジネスとか、都市型とか、リゾート型とか言いますよね、そこで、都市型を超えるという意味での 「新都市型」です。
もう一つは、ユーザー (お客さん) 自身はスペースを買うのではなく、「満足を買う」 と考えると、いかにコンパクトなスペースで、いかに満足してもらえるものを提供できるかを考えるかなんだよね。
では、「満足とは何なのか」 と考えると、よりベッドが大きいほうがいいでしょう。テレビは大きいほうがいいでしょうということになる。電気のスイッチなんかも、ベッドサイドに集約させると、わかりやすいし、寝ころんだまま操作ができるメリットがありますからね。ユーザーはそのような、より便利なホテルに満足して、選んでくれるんじゃないかと。
部屋は小さくていいという考えは、環境にも優しいんだよね。エアコンも炭酸ガスを排出することを考えると、コンパクトな部屋の場合、排出量が約3分1に抑えられる。
と、言ってもホテルというのはね、究極の立地産業なんでね。いくらいいものでも場所が悪ければ使って頂けない。だから、まずは駅から徒歩3分以内の立地にこだわる展開をする。
利用客の多い路線の、乗降客の多い駅近く、基本、徒歩3分以内ですね。そういう基本的なコンセプトに基づき用地を選定する。
あとは、月間稼働率を上げるには、やはり平日なんですよ。平日にたくさん泊まって頂かないと、週末だけ100%でも月間稼働率は上がらない。では、平日使う人は誰かというとビジネスマンなんです。
それで、ビジネスマンにメリットのあるホテルをということで、キャッシュバック付き会員システムを作ったんです。1984年12月に最初にホテルを作った当初からその制度を採用しまして、現在、累積会員数が1900万人。初期のお客様の要望にお応えして、希望される場所に一軒一軒作っていったら、全国展開になりましてね、一番多いところが東京な訳です。
原: 初期の頃から会員制度を確立しているというと、結構なファン層が定着していますね?
元谷: コアな客層としてビジネスマンを主力におきながら、週末は国内観光。日~月あたりは海外からのインバウンドというようにまんべんなく使ってもらえるようにする。結果、東京のホテルは、コロナ前の月間稼働率は101%ぐらいです。なぜ1%が付くのかというと、アパホテルでは「日帰りプラン」を販売しており、昼だけ使ってもらえるプランと、通常の宿泊プランを合わせて二度売りをしたからです。
というのもね、満室の場合でも、常連のお客さんから問い合わせがよくあるので、お断りするのも申し訳なくて、早くにチェックアウトされたお客様の部屋を、自分たちで再セッティングすれば、泊まって頂けるのでは、と自発的に社員が始めたんですよ。
110%にするには客室清掃業者を常駐させておく必要があるので、社員が自分たちでやると最大でも3~5室が限度だね。だから、ウエイトは置いていませんが、常連さんたちの申し出を断るのは申し訳ないから、というところが始まって、結果、二度売りで東京のホテルは大体101%あたりの100%超えになりました。
そういう経緯から、昼売るのもいいな、ということになりまして、大浴場のある所は「湯ったり日帰りプラン」を作りました。今、コロナ禍の状況下では、入浴しなくても、昼間にビジネスする空間を探している在宅勤務の方々もいるということがわかって、テレワークプランも加えました。なぜなら昼間、子供さんがいて家で仕事ができないから、昼だけホテルで仕事したいという方もいらっしゃるんですね。夜は、普通の宿泊客に泊まって頂いて、一日二度売りをします。
日本の観光産業の未来は明るい
原: 私たちも若輩ながらホテルを経営しているので、稼働率101%というのはなかなか到達しないです…。やはり、立地戦略もありますね。
元谷: なので、土地の取得は基本的に徒歩3分以内って決めているんですよ。土地代の高い安いは大したことない。というのも、今は金利が低い。いい場所と悪い場所では売り上げの比率や需要が全く違うから、金利の安い時に、高くても良い場所にドンドン作ったらいいということで、立地にこだわる展開をしています。
原: ホテルプランや部屋数の想定等は一律の規格に決めていらっしゃるんですか?
元谷: 平面プランは大体決まってくるんですよ。最小化していくと、これ以上小さくはできないという限界のところで止まるから。とにかく、基本的に100室以下のものは作らない。概ね150~200室くらいですかね。
経済的には300室くらいがいいのですが需要のないところには大きいのを作ってもしょうがないからね。でも、80~90室くらいの規模だと人件費が大きくなってしまう。
原: ほぼ固定費ですよね。
元谷: だからね、「ドミナント戦略」 と言って、周りに同時にたくさん作って、支配人がいくつかの施設を兼務して廻れるようにする。分散させると、それぞれに支配人を置かなくてはいけないから、そういうのをなるべく避けて、ある程度まとめて作ると。うちの場合、そういうのを 「ドミナント戦略」 と呼んでいるんです。
あとは、「大型化戦略」 で、需要のあるところには1000室を超える大型を作ったり。というのはね、今は少しコロナで状況変化していますが、これから先、日本の成長産業は観光産業なんですよ。かつては家電だったり、自動車だったりしましたが、今はそれが終わって、これからは観光産業ですよ。
日本は治安もよくて、景観もよく、食べ物がおいしくて、歴史があって、見る所がたくさんある。そういうところに人は集まってくるじゃないですか。将来的に宿泊需要が見込めるのは日本じゃないかと。そうなると、注目されるのは宿泊産業なんですよ。
オリンピックなどのイベントは一過性ですから、あってもなくても変わらない。ホテルは一度作れば20~30年有する訳だから、長いスパンで考え、数日間だけがいいとか悪いとかで作ると却ってマイナスだよと。
そういうんじゃなくて、要するに、観光、ビジネス、インバウンド全部に使ってもらえて、初めて100%になるということだね。どの要素が欠けても100%にならない。そういう意味で、東京の地下鉄駅に近く、歩いて2~3分。そうすれば、ビジネスでも観光でも使える。一定の規模があれば観光バスもアクセスできて、インバウンドにもいい。
償却節税から始まったホテル経営
原: 失礼ながら、今年はさすがの御社も、状況はいかがでしょうか。
元谷: 我々は過去3年間、毎年ホテル部門では3割の利益を出し、毎年350億円ずつの利益を上げています。ホテルは大体5%の利益が普通です。うちの場合は、マンションもありますし、賃貸もやっていますので、全体を取ると26%くらいの利益です。ホテルだけをとると概ね3割強です。ただ、3割出すには、その分稼働率が100%近くにならないと無理です。
いずれにせよ、世界中見まわしても、ホテルの利益で30%以上出しているのはうちくらいしかないですよ。ところが、今年はコロナ禍で、まあ10年に一回はこういうこともあると。現在の目標は、とにかく赤字にするなと。11月決算ですけれど、黒字になるように努力していますよ。
ほぼ黒字になるんじゃないかな。でも、これで秋以降、二次感染などで蔓延が再発するとなると、来年、黒字が出るかはわからないですね。来年の状況はそれにかかっています。
原: ちなみに (プロパティは) 所有されているんですか?
元谷:ほとんど全部所有です。なぜかというと、償却メリットがあるからです。償却節税。償却が終わるたびに投資利回りが上がってきます。土地は償却できないけれど、建物も備品も償却できる。と、いうことで最大限の償却をします。その上で3割の利益を出す。
原: 普通のホテルやデベロッパーというと、売却ということを考えますね?
元谷: それはお金無いからでしょう。うちの場合は、金融機関が低金利で資金を貸してくれる。金融機関としては、貸し倒れリスクのないところに貸したいんですよ。無担保のホテルを65~66棟くらい持ってますよ。それらは、借りずに建てたものや返済が終わっているものです。どちらにしても、資産の背景があるから、アパさんは絶対潰れないと言って、低い金利で貸してくれるんです。
原: 時が経てば経つと、より加速度的に建てられる土台が出来てきているんですね。
元谷: 資産を保有することで償却が取れるというメリットがある。それが節税になるというメリットです。
原: 普通は、そうしたくてもお金が無くて、なかなか実現しませんね。
元谷: 仕方ないから、売却を考えるんだと思いますが、うちの場合はお金があったんです。なぜかというと片方で建売住宅や分譲マンションをやっていたからです。それらで得た利益をホテルで節税する。そのためにホテルを造った訳です。
最初は注文住宅を始めたんですよ。その次が、木造の建売住宅。それから、賃貸マンションを保有して償却を取り、そのうち賃貸マンションを売ったり、マンションを分譲するようになりました。そうすると、最終的に譲渡益が発生するじゃないですか。それをどう節税するかと考え、今度はホテルを償却資産とした訳です。だからアパは元々は建売りなんですよ。
償却を取りながら利益も出す。ホテルというのは、特に最初のスタートが大事です。お金がなくてホテルを借りて始めるのと、得た利益をどうしようか、と言って償却節税のためにホテルを保有して始めるのではスタートが違う。
うちの場合だって、最初は、「お金が無くても何ができるか」 ということを考えて、注文住宅を始めたんですよ。でも、注文住宅は一つ一つ設計する必要があり時間がかかる、それなら土地をまとめて買って建売したほうがよいと。その次は二階建ての木造から、鉄筋にしたほうがいいんじゃないかと。そうやってどんどん進化していったんですよ。その結果、今のかたち (ホテル) が一番いいと。モノも残るし、利益率も高い。
それと、まだまだ観光産業には伸びしろがあって、ホテルはまだまだ必要とされる。それで、これに特化したほうが良いと考え、建売住宅は辞め、分譲マンションも今は北陸でしかやっていません。というのも、その為に入ってきた社員がいて、彼らの為にやっているんですよ。
うちの総資産の評価額は1兆3000億。借金が3000億だから、差し引いて正味1兆円です。ゼロから始めて49年かけて1兆円の資産を作ったわけですよ。創業2年目から、個人も会社も高額所得番付に連続で出ています。
ブランド力を磨く
原: 最近ではFC(フランチャイズ )も幅広く展開していらっしゃいますが、立地戦略の一つなのでしょうか。
元谷: ユーザー (お客様) の為です。泊まりたい場所にアパがないと、皆さん他の所に行って会員になってしまうじゃないですか。ですから、 「囲い込み戦略」 です。
でも、うちが直営で所有するのは、さっきも言ったけれど、需要のある所のみで、東京でも中心部だけです。だから、少し離れているところはFC。さらに離れたところはパートナー (提携ホテル) というかたちです。三段階になっている訳です。
直営ホテルと競合する場所にFCを作ると、オーナーは喜ぶけれど、うちはお客さんを取られてしまって、アパの敵はアパになってしまう。だから、うちが進出を予定していないところにだけ、FCを呼ぶ。
もし、さらに需要のない所でやりたいと言ってきたら、「提携にしましょうよと。提携はポイントが付きます。でもアパの名は名乗れませんよ」 と。
その分、FCの場合は、アパという名を名乗る場合は仕様基準を合わせてもらわないといけない。お客さん側が直営なのか、FCなのかの区別がつかないので、統一しないとブランド戦略的にもバラツキが出てきてしまうからね。
原: お客さん側はFCかどうかわかるのでしょうか。
元谷: いや、わかりません。だから、内装なども改造して全部基準に合わせてもらう。きちんと、アパ基準に合わせてくれたらFCとして認めます。でも、基本的にあまりFCは広げたくないんですよ。自分たちがどんどん出て行ったほうがいいので、一旦シェアを渡してしまうと、自分たちが出ていく時に、競合しなくてはいけなくなってしまう。協定書では、うちはFCのある場所にも進出できる権利はあるのですが、あまりご迷惑おかけしたくないですからね。
原: FCとパートナーを合わせたかたちで全体の8%ですか?
元谷: いや、アパと名の付く施設のうちFCが8%です。これだけ多いと、自分でも直営だか、FCだかわからない(笑)。「あら、このホテル俺のホテル? FC?」 なんてこともありますよ。
高速の上からアパと書いてあるホテルを見ても、特定はできないね。下に降りてみると自分で建てた物は設計した時に下見もしているので、すぐにわかるんですがね。
原: そういう話を伺うと安心します (笑)。ところで、2~3年前から民泊などの異業種から参入して来ていますが、代表はどう見ていますか。現在はコロナ禍で苦労しているようです。
元谷: そうだね。一口で言うと、ブランド力の無いところは厳しい経営をせざるを得ない。やっぱり、どうブランド力を磨いていくか。だから、我々もブランド力が落ちないようにFC先を限定している訳ですよ。
買収した施設もブランド力が落ちないように努めないといけない。というのも、うちも地方はほとんど買収なんですよ。北海道は全部、東北は仙台、福島以外は全部。四国は全部。中国は、広島以外全部。新築は東京、大阪、京都、福岡くらいのものですよ。あとの場所は、ほとんどが買収です。
原: なぜ、新築じゃなくて買収なんですか?
元谷: それは手間暇かかるからですよ。出来た物を買ってくださいと言われれば、そのほうが早いじゃないですか。土地買って、設計していたら時間がかかるじゃないですか。
だから 「大型化戦略」 なんです。100室のホテルを10棟作るより、1000室ホテル1棟を出店したほうが効率がいい。オーナーが一人で判断する場合はだんだん大型化してきますよ。人件費も下がるし。要はそれだけの需要があるかどうかというところですよ。土地も所有、建物も所有、償却を取りながら、日が経つほど含み資産が増えてゆく。それが1兆3000億の資産なんです。うちはそれを狙ってやってきた。
原: 海外の展開についてはいかがでしょうか。
元谷: 今ある海外物件のほとんどは買収です。39棟あるホテルのうち38棟は、カナダに本社のあるコーストホテルというホテルチェーンを買収したんです。そのコーストホテルは日本人がオーナーだったんですよ。元々、日本人のオーナーに従ってやってくれているチェーンだから馴染みもあると思いましてね。内容を評価しての買収です。
原: 今後、海外の物件を増やしてゆく可能性はありますか。
元谷: そういうご縁があればだね。金利が低いから、高い利回りでなくても収益はとれ、保有して償却を取れば節税にもなります。買収は新築するよりも利益は出ることはないですが、何より、時間を短縮するために買収する。だから、まとまったチェーンを買収して経営効率を上げる。経営効率をよくするためにフロント業務をハイテク化(自動化)すると一時的には利益率は下がるが、その後改善する。手間と時間はかかるけれど、利益率の高い新築ホテルとのバランスの問題だね。
原: こういう状況ですと、御社には、これからもMA案件が来そうですね。
元谷: この先だね。今はまだ銀行が支えている。もう一年すると、絶好の買収チャンスが来るかもしれないね。
原: そうなると、新しいアパさんの姿が見られそうですね。
元谷: そうあって欲しいよね。そういう意味ではうちは基礎体力があるから、売り物件が出てくれば大歓迎だよね。
原: 一人勝ちですね。
元谷: 運がいいというか、創業から一度も赤字が無く、会社を設立した次の年から長者番付に載っているからね。と言っても、つねに 「納税義務を果たせよ」 と言いながら、実行してきたんですよ。我々は、日本のインフラを使わせて頂いて事業しているわけですから。納税は当然の義務ですよと。
言論活動と経営の二刀流
原: 大変失礼ながら、代表はメディアのイメージだと、あまり経営戦略を重視する方だとは思っていなかったので、今、少しギャップに驚いています。
元谷: そうかな (笑)。ところで、もう一つ、僕自身で 「勝兵塾」 というのをやっていましてね。延べ3万人の塾生が参加しています。駐日大使、国会議員、大学教授も多いですよ。現職の大臣もいます。藤誠志というペンネームで30年、社会時評エッセイを出しています。 『Apple Town』 という月刊誌なんだけれど、10万部発行で、30年と2か月で352回 (2020年10月現在)。対談も国会議事や大使などの要人なんですよ。
原: なぜ、言論活動を始められたのですか?
元谷: メディアの報道がおかしいから、私の想いをはっきり伝えたいというのもありましたね。
「二兎追う者は二兎とも得る」 というのが座右の銘の一つですから (笑)。毎月そういう座右の銘を書いていまして、英訳を付けて一冊の本にまとめています。それを見た海外の大使なんか、あちらから対談に出たいと電話がかかってくることもあるんですよ。日本最大のホテルオーナーと対談すると、本国からも評価してもらえるということなんですよ。
原: 失礼ながら、代表からは、とにかくすべての事を楽しくやられているという思いが伝わってきます。
元谷: 一生懸命は苦手なんですよ。適当に楽しくやりながら、うまくいく。楽しむというのは大事で、いやなら辞めればいい訳です。
原: お話を伺えて良かったです。御社に、そして、代表ご自身にどういう歴史や背景があるかということは、我々には、全く見えない訳ですから、貴重な機会です。
元谷: そうだね。さっきも言ったけれど、注文、建売住宅から始まって、節税のためにホテルを始めた訳だけれど、できる節税をしない経営者というのは能力が無いんじゃないかなと思いますね。
信用金庫に勤めている時に、当時はまだ元利均等償還の長期住宅ローン制度というのが無かったんですよ。長期でも7~8年の元金均等償還。それを大蔵省に長期15年の元利均等償還の長期住宅ローンを認めていただき、信用金庫の関係不動産会社として独立したんですよ。
原: 本当にすべてが勝ちパターンですね。
元谷: 勝てる武器がないと最初から独立しても、皆、潰れちゃうんですよ。だから、ホテルでは、キャッシュバック付き会員システムという勝ちパターンを作って、成功したんです。なぜなら、ビジネスマンの場合、会社が払い、自分にはポイントが貯まって現金化もできる。泊まれる範囲の一番高い部屋に泊まる。そういうふうに金を払うプレーヤーと、使用するユーザーと分けて考える訳です。
「分断戦略」 というかね。要するに、何よりもユーザーに選んでもらえるホテルを経営するということに尽きますね。
【プロフィール】 元谷外志雄 (もとやとしお) アパグループ代表 1943年石川県生まれ。 信用金庫勤務を経て、注文住宅販売会社 「信金開発株式会社」 (後の 「アパ株式会社」) を創業。 その後、マンション事業を起業しマンションやホテル事業などを中核とする大企業へと育て上げる。 「藤誠志」 のペンネームで社会時評エッセイ執筆など言論活動も積極的に行っている。 APA HOTELS&RESORTS 公式サイトから予約する>> 楽天トラベルから予約する>>
文:朝岡久美子